L.v.ベートーヴェン 交響曲第2番 ニ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1936年5月14日
発売及び
CD番号
TAHRA(TAH 420-421)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクのベートーヴェンの第2番の録音は全部で3種類あり、その全てがライブ録音です。
 この1936年の演奏は、その3種類の中でも、最も若い時の演奏になります。(TAHRA401-402のディスコグラフィーによると、この3種類の他に、1941年にスタジオ録音を行なっているようです。ただ、今までレコード化された事は無いと思いますし、そもそも音源が現存しているかどうかも不明のようです)
 3種類の演奏とも、基本的なスタンスは、ほとんど変わりない……というか、三日連続して録音したのじゃないかと思えるくらい全然変わっていません。
 たぶん、よほど注意して聴いていたり、較べて聴かない限り、同じ演奏といわれても、あっさりと信じてしまいそうです。
 これが、チャイコフスキーやブラームスといった、メンゲルベルクのロマン的な傾向が強く出る曲であれば、年月とともに芸風がどんどん極端(笑)になっていくのが良くわかるのですが、ベートーヴェン、特に交響曲第2番のような初期の交響曲は、大きく崩さないため、晩年の演奏でも、若い頃の演奏とほとんどスタイルに変化がないのです。
 とはいえ、較べて聴いてみると、さすがに違いが見えてきます。
 3種類の演奏の中では、この1936年の演奏が、最も直線的で、硬い音です。
 テンポの伸び縮みも僅かで、他の2種類でははっきりと表れている、第2主題の前でテンポを遅くする演出も、ほとんど行なわず、真っ直ぐに音楽を進めています。
 あまりテンポを崩さないせいか、音の粒は、この演奏が一番揃っていて、まるでビシッと糊付けされたシャツのように、いくぶん堅苦しいのですが、隅々までピンと張った、引き締まったアンサンブルです。
 さらに、1936年のライブにしては録音が良く、各楽器の細かい動きまでハッキリと聞こえ、特に弦楽器の音は、各パートともバランス良く、しかも生々しい音で聞こえるため、他のライブ録音では分かり難かった、楽器から楽器へとメロディーや伴奏を繋いで行く動きが、ライブとは思えないぐらいキチンと揃っているのがよくわかります。
 考えてみると、録音の良さといい、堅苦しいまでに引き締まった音といい、ライブというよりもスタジオ録音みたいな演奏です。
 ただ、その一方で、第2楽章のようなゆったりとした楽章では、テンポをいろいろ動かして、それこそ、後年の二つの演奏よりも、さらに大きくテンポを動かしているのにもかかわらず、どうも今一つ効果的ではないように感じました。
 テンポの動かし方が音楽の流れに合っていなくて、メロディーをより盛り立てるはずが、逆に自然な流れを遮ってしまい、しばしば、前に進もうとするメロディーを、後ろに引っ張って止めてしまっています。
 また、第4楽章にも他の演奏には無い特徴があります。
 後半の、一つ目のフェルマータの後辺りから、急にテンポが速くなり、後半の頂点である、弦楽器(除Vn)と木管楽器がフォルティッシモで8分音符の『ドシラシドシドシ、ドシラシドシドシ』という細かい動きを演奏するところでは、猛烈な速さにまで達し、噴火のような勢いで曲を一気に盛り上げています。
 後年の演奏でも、たしかにテンポアップはしているのですが、この1936年の演奏ほど、極端ではありません。
 さらに、もう一点。
 これは少し不思議なのですが、この演奏だけ、第4楽章の中ほどに10小節程度のカットがあります。
 わたしも初めは気が付かなかったぐらいで、そう目立つカットではないのですが、メンゲルベルクは録音によって繰り返しをするしないの違いはあっても、カットしたりしなかったりという変更はほとんどなく、ましてや、同じオーケストラでライブ録音同士で違いがある事は、ほとんどなかったと思います。
 そう考えると、この録音にだけカットがあるというのも妙な気がします。
 後年の2種類の演奏では行なっていた第1楽章の繰り返しを、この演奏ではやっていないという事もありますし、一応、この演奏の1936年から次の1940年までの間に、メンゲルベルクの考えが変わったという線が一番無難だとはお思いますが、もしかしたら、編集の段階で何らかの問題があった可能性もあるのではないかと考えています。(ただし、聴いた限りでは、その部分のつなぎに編集が入っているようには聞こえませんでした)(2003/5/10)


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