L.v.ベートーヴェン 交響曲第1番 ハ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1930年1月9日
発売及び
CD番号
BIDDULPH(WHL 020)


このCDを聴いた感想です。


 ベートーヴェンの第1番はメンゲルベルクでは多く録音が残っている曲の一つで、ライブ録音が2種類、スタジオ録音が2種類の計4種類があります。
 その中でコンセルトヘボウ管を指揮したライブ録音(二つとも)とスタジオ録音の一つは録音年が1938年から40年にかけての2年間に集中しているのに対して、今回取り上げるニューヨーク・フィル響とのスタジオ録音は1930年と、ほぼ10年近く前の録音です。
 演奏の傾向も、コンセルトヘボウ管との録音に較べるとより直線的ですが、がちがちに一定のテンポを保っているわけではありません。
 むしろ、ベートーヴェンの他の交響曲の演奏と比較するとテンポの伸び縮みはある方でしょう。後のコンセルトヘボウ管との演奏でも大きな特徴となっている、第1楽章の主部の第2主題の直前で大きくテンポを落とすところは既に表れていますし(後のコンセルトヘボウ管よりはその落差は小さいものですが)、それ以外の部分でも曲の流れに合わせて少しずつテンポを速めたり遅くしたりといった変化もさせています。いろいろと融通が利き、少し曲線がかっています。
 ただし、音楽自体はチャイコフスキーを演奏する時のような柔らかく粘ったものではなく、逆にテンポが動いていてもなお硬く、むしろ骨のある折り目正しい演奏という印象を受けました。
 そう感じる大きな要因は、一つ一つの音をアクセントのように強く、その上移り変わる際にスパッと短く切っている点にあります。
 扱いとしては現代のスピード感ある演奏に近いものですが、テンポがいろいろと動くのと、音に重さがあるため、スピード感はそれほど感じません。
 スピード感というより力強さを感じさせます。
 例えば速い動きでは、スピード感のある演奏が『タカタカタカタ』といった軽さがあるのに対して、この演奏は『ダカダカダカダ』といった感じで、音が重く力強いのです。清音に対する濁音みたいなもので、澄んだ美しさはありませんが、音に力と勢いがあります。
 また、これはメンゲルベルクとニューヨーク・フィル響だからというのもありますが、重量感はあっても沈むような暗さは無く、基本的に明るく華やかなのです。ベートーヴェンの第1番にしてはちょっと派手かもしれませんが、夏の太陽のようにギラギラと輝いています。

 また、古い時代の録音としては珍しく、第1・3・4楽章(つまり第2楽章以外)の繰り返しを楽譜通り全部行なっています。
 後のコンセルトヘボウ管との演奏では、ライブ録音では二つともこの録音と同じように第2楽章以外は全て繰り返しているのに、唯一スタジオ録音だけは第1・4楽章の繰り返しを行なっていません。録音時間の制限のより厳しかった古い録音では繰り返しているのに、より長時間の録音が可能になった後の録音では繰り返していないところがなかなか不思議です。ライブ録音ではちゃんと繰り返しているのですから、メンゲルベルクが繰り返さないのを標準にしていたわけでもなさそうですし、気になるところです。(2005/6/25)


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