L.v.ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調

指揮フェリックス・ワインガルトナー
独奏ピアノ:マルグリット・ロン
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1939年6月9・10日
カップリングベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 他
「ベートーヴェン ピアノ協奏曲集」より
発売ANDANTE(Columbia)
CD番号1996-1999


このCDを聴いた感想です。


 ソロにしろ、オーケストラにしろ、全体よりもその場での一瞬に集中しているみたいです。
 例えばメロディーを演奏していれば、そのメロディーをいかに美しく歌わせるかに集中し、次にどうつながっていくかというのは、あまり考えてないようなのです。とにかくその瞬間が勝負という感じで。
 その歌わせ方は細部まで気を配ったとても丁寧なもので、テンポを大きく動かしたりこそしませんが、最後をちょっと引っ張ったりとか、音の出るのを少し遅らせてじらせたりして、ストレートには歌わせず、柔らかく情感を持たせています。
 なかでも、ロンのピアノ・ソロは音色にも引き付けられました。
 バランスが妙に低音よりでしたが(これは、たぶん録音の際のバランスが偏っていたのではないかと推測しています)、全体的に音が和やかで、高音でも『コーン』と硬い板にぶつかるような尖った音ではなく、硬い板に突き当たってもその隙間からすり抜けていく風のように薄く柔らかい音です。
 歌い方も軽くて丸く、小さなフレーズ一つにいたるまで、あくまでも明るく、重すぎたり強すぎたりしないように、大事に大事に歌わせています。
 あまりにも細かいところまで力を入れすぎたため、全体としてみると、コレという太い大きな流れがあるか、という点では少し弱いかもしれません。もちろん、いくら歌いこんでいるからといっても、別にその場の思いつきで勝手気ままにやっているわけではないでしょうし、同じフレーズはどこに出てきても同じ歌い方で統一されていますが、芯は太くドカッとしているというより、結構フラフラしています。
 その代わり、部分部分での美しさには目を見張ります。
 ちょっとした音、フレーズ、その一つ一つが、速い部分では流れるように、ゆったりとした部分ではフワフワと漂うようにと、迫力こそありませんが、邪心が全く無いみたいに明るく可憐で夢のような雰囲気を創り出しています。
 オーケストラの方も、ピアノ・ソロほどではありませんが、ほぼ同じ傾向です。
 とにかくメロディーを担当したパートはよく歌っています。といってもチャイコフスキーをやっているわけではありませんし、それに『パリ』のオーケストラなんですから(笑)やたらと感情をぶつけまくったような野暮(?)な歌い方はしていません。
 あくまでも微妙な変化を駆使して歌っているのですが、それでも主役は自分とばかりにいろいろ変化させるため、伴奏パートと多少ずれることも珍しくありません。
 その伴奏パートも、メロディーになったとたん、低音楽器だろうと、和音を支える役割なんかあっさり放棄して歌いまくるので、あまりどっちもどっちといったところでしょうか。
 自分がメロディーの時は、とにかくそのメロディーを歌うことに集中する、江戸っ子なみというか、まさに「今を生きる」という言葉が頭に浮かんできました。
 そういう集団がまがりなりにもまとまっているのは、ひとえに指揮者のワインガルトナーの尽力によるものかもしれません。
 なにせ、それぞれのプレーヤーがそれだけ歌いまくっているのに、パリ音楽院管としてはむしろアンサンブルがカッチリまとまっている方なのですから。
 ……えー、間違っても某ベルリン・フィルとか某フィラデルフィア管などとは較べないで頂きますようお願い致します(笑)
 パリ音楽院管のアピールポイントはもっと別のところにあるのです。

 録音状態は、1939年ということを考えるとまあまあ良い方ではないでしょうか。
 フォルテでは多少音が割れますし、上記にも書いたとおり全体としても低音が妙に強めですが、サーという音以外の雑音はほとんどなく、楽器のそれぞれの音色は割りとよく聴き取れます。(2004/12/18)


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