L.V.ベートーヴェン 「レオノーレ」序曲 第3番

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1930年5月30日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CDS 9018)
Refrain(PMCD-3)
東芝EMI(TOCE-8191〜99)
NAXOS(8.110864)


このCDを聴いた感想です。


 キレは良いのですが少し重い演奏です。
 メンゲルベルクがベートーヴェンを演奏する時、特にアレグロのような速いテンポを演奏する時は、部分的に大きくテンポを落としたりすることはあっても細かくテンポを揺らすことはあまりありません。
 もちろん曲調にもよるのでしょうが、このレオノーレ第3番のような、テンポがいろいろあってもその境目が明確な曲は、異なるテンポに移る時に盛り上げるためにテンポを遅くするくらいで、他の部分は概ね一定のテンポを保って演奏していたと思います。
 それがこの録音では、メンゲルベルクはアレグロでも結構頻繁にテンポを動かしています。それも、次第に遅くなったり次第に速くなったりといったスロープのような滑らかな変動ではなく、階段のように明確に違いがついています。
 変化自体はわずかなものなので、これが滑らかに変わっていれば気がつかないぐらいでしょう。しかし、わずかながら確かに境目がついているため、聴いているとハッキリとわかります。
 この境目が頻繁に出てくるため、聴いていると、「あ、ちょっと遅くなった」「今度は、元に戻した」とついついそちらの方に耳が集中してしまい、どうも気になります。
 頭の中のイメージでは、こういう部分はテンポを保って進んでいくものというのがあるため、遅い部分が出るたびにどうしても重く感じてしまうのです。
 しかも、もともと低音がバランス的に強いというものあり、ますます重心が下がり、重くなっていきます。
 ただ、重いといっても鈍くて動きが悪いわけではありません。
 ここがキレの良さなのですが、基本的に音は短めで、さらにスラーとスタッカートの差を大きくつけているため、音楽にメリハリがあり輪郭も鮮やかです。
 これは高音のメロディー楽器だけでなく低音楽器も同じで、リズムを刻む音でも短く締まった音で演奏することで、動きがより明確になり、どっしりとした重さがありながらちゃんと機能性も保たれています。
 その一方で、テンポを頻繁に変えている分だけ、メンゲルベルクにしてはアンサンブルがもう一つ合っていないように思われました。
 特に、2回目の信号ラッパの少し先のフルート(とファゴット)の長いソロの辺りは、どう聴いてもソロと伴奏の弦楽器が噛み合っていなくて、かなり違和感を感じます。もっともその原因の大部分は、フルートが思いっきりすっころんでいるためなのですが(笑)
 メロディーの扱いは、アレグロに入った時に出てくる第1主題のメロディーのような動きの速いメロディーは他の演奏とそれほど差はありませんが、後半に登場する全音符でつないでいくようなスパン大きなメロディーは、さすがに独特のしっとりとした甘さがあります。
 時折ポルタメントを挟みながら柔らかくつないで大きく山を作っていき、甘く囁くように歌わせています。
 この魅力は、他にはなかなか無いものです。

 ちなみに録音は多少雑音が入っているものの良い方でしょう。
 1930年という古い録音ですが、スタジオ録音の利点がいかされていて、楽器間の分離が良くかなり細かい部分まで聞き取れますし、フォルテになっても音が割れることなく、楽に聴くことができます。(2004/1/31)


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