L.V.ベートーヴェン 「フィデリオ」序曲

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏バンベルク交響楽団
録音1985年10月21〜26日
カップリングベートーヴェン 「エグモント」序曲 他
発売BMGビクター(RCA)
CD番号BVCC-5029


このCDを聴いた感想です。


 ヨッフムとバンベルク響だから、きっと素朴で重厚な演奏だろうなー、と予想して聴き始めましたが、意外と風通しがよく動きも軽い演奏でした。
 音の立ち上がりが早く、特に序奏を抜けた後のアレグロに入ってからは、テンポよく進んでいきます。音の厚みは十分ですが、あまりどっしりと低音を響かせるのではなく、むしろ中音が厚く、全体が丸くまとまっています。人口ピラミッドでいうところの富士山型ではなく釣鐘型から壺型に近い形ですね。
 また、テンポよく進んでいても、アタックは鋭くなく、攻撃的なところはありません。  雰囲気は全体的に穏やかです。
 古楽器系の演奏などでよくありそうな、常に緊張感を高く保つピリピリとした雰囲気とは大きく異なっています。
 速いテンポのアレグロの部分でも、入ったばかりのピアノの部分などは、のんびりとまではいかないまでも、肩の力を抜いた和やかな雰囲気です。明るい曲調も、真夏の空のようにギラギラと濃いものではなく、五月晴れの空のように高く抜けた、淡い明るさで、伸び伸びとしています。
 このリラックスした雰囲気から、フォルテに向かうにつれて、少しずつ力が入っていきます。
 緊張感も次第に高まり、頂点では十分に迫力も出ていて、淡かった明るさもギラギラと輝くばかりの濃さに変わります。
 ただ、あまり金管を強調していません。
 フォルテでのメインはあくまでも弦楽器。それを木管が彩り、金管は縁の下の力持ちのように表面には表れません。
 本来なら、前半の頂点ではトランペットが跳ねるようなリズムの高い音を、後半の頂点ではそれにトロンボーンまで加わり、そこが金管にとってはソロ以外では一番の見せ場のはずです。
 しかし、金管はほとんど目立たず、跳ねるような特徴的なリズムさえほとんど聞こえないぐらいです。
 個人的には、もうちょっと金管が出ても良いような気もするのですが、このままでも迫力は十分にありますし、おそらく金管が強く出ることで全体のまとまった雰囲気が壊れてしまうを嫌ったのではないかと思います。
 金管は、むしろホルンなどのソロの方が印象に残りました。
 これはなんといっても音色です。
 聞く者を驚かせるような変わったところなど何一つ無く、強くアピールもしてこない。ただ深く安定感のある音色です。
 しかし、この音色だからこそ穏やかで淡く明るい雰囲気が出るのです。安らぎを感じさせる落ち着いた雰囲気があります。
 ヨッフムは、そういう音色、響きなどを丁寧に組み合わせて曲を暖かくまとめています。(2006/9/16)


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