L.v.ベートーヴェン 「エグモント」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1943年4月29日
カップリングベートーヴェン 交響曲第9番
販売GRAMMOFONO2000
CD番号AB 78896


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクの「エグモント」はわたしが知っている限りでは、この演奏を含めて4種類あります。

 1.1926年5月    コンセルトヘボウ管弦楽団 コロンビアへの録音です。
 2.1930年1月14日 ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団 ビクターへの録音です。
 3.1931年6月2日  コンセルトヘボウ管弦楽団 コロンビアへの再録音です。
 4.1943年4月29日 コンセルトヘボウ管弦楽団 当録音です。

 以上の4種類の中で、今回取り上げた4番のみがライブ録音です。
 こうやって、みるとわかりますが、初めの三つの録音が、ほぼ5年間に固まっているのに対して、最後だけ、10年以上間が離れています。
 この10年の月日は、同曲異演でもほとんど解釈が変わらないといわれているメンゲルベルクにとっても大きく、以前の3種類とは大きく変わってきています。
 一言でいうと……クドいっ!
 以前の演奏が、風通しが良く、スッキリとテキパキ進めていくのに対して、後の演奏では、良くも悪くもネチッコク重い演奏になっています。
 フレーズの最後でリタルダンドしたりしているので、せっかくの勢いが削がれるところも多いのですが、その反面、より劇的な効果が高まっているのも事実です。
 曲の中の速い部分と遅い部分の差を大きくすることで、迫力はずいぶんと増してきています。

 その一方、以前の演奏と同じ部分もけっこうあります。
 例えば、音の一つ一つをマルカートで演奏していくところは、1926年の演奏から何ら変わりはありません。
 また、ポルタメントをかける位置も、驚くほど変わっていません。
 さらには、メンゲルベルクは曲の最後の部分で、ティンパニーの楽譜を変えているのですが、この部分さえ、4種類の演奏とも同じです。

 こうやって、年代を追っていくと、録音技術の進歩の速さが良くわかります。
 復刻にもよるかと思いますが、1926年の録音から1930年の演奏では、格段に楽器間の分離が良くなり、1931年の録音では、それに加えて響きがマイクに入るようになり、音の広がりに大きな差が出てきています。
 特に、1930年から1931年の差は大きく、その間の技術の進歩には驚かされます。ただ、実際には録音会社とオーケストラが異なっているため、一概には比較できませんが…
 それに比べると、1931年の録音と1943年の間では、間の年数ほどは大きな進歩はありません。まあ、これはスタジオ録音とライブ録音の違いがあるので、もっと一緒には比べられませんが…

 今回、この文章を書くにあたって、わたしが持っているメンゲルベルクのエグモントのCDを探したら、なんと8枚もありました。
 結構持っているはずとは思っていましたが、演奏は4種類しかないのに8枚とは…
 これでは単なるアホみたいではありませんか(笑)
 まあ、そのおかげで、同じ演奏のいろいろな復刻を聴き比べることができました。
 さっき、録音の進歩について書きましたが、実際には、復刻にも大きく影響されます。
 今回取り上げた1943年の演奏は3種類手元にあり、Grammofono2000の他にMusic&Arts社のものと、キングレコードから出た国内盤を持っています。
 キングレコードのCDはちょっと音がこもり気味で、Music&Arts社のものはちょっと雑音が多いので、わたしはこのGrammofono2000の復刻が一番好きです。(2000/6/23)