L.ケルビーニ 歌劇「アナクレオン」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1943年4月15日
発売及び
CD番号
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.111)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクのケルビーニの録音はアナクレオン序曲のみですが、1927年のコロンビアへのスタジオ録音と、今回取り上げる1943年のライブの二種類の録音が残っています。正確には1927年の方はテイクの異なる演奏があるのかもしれませんが、どちらも少なくとも聞いて一瞬でわかるほどの違いはありません。
 それに較べて、1927年と1943年の演奏では、いろいろと違いが出ています。
 やはり年齢がそのまま反映されているのか、1927年の方が若々しくすっきり直線的で、1943年の方が細かい部分まで神経を使い、表現もより大げさになっています。
 例えば、音の出し方もずいぶん印象が違います。
 この曲は、ベートーヴェンのレオノーレ第3番みたいに、初めは遅いテンポでゆったりと始まり、途中からアレグロに変わります。そこからはほぼ最後まで同じテンポです。
 そのアレグロの始まり方も、レオノーレ第3番のように、ヴァイオリンで弱く始まります。
 その部分を、1927年の方は弱いピアノとはいえしっかりとした音で何の躊躇も無くテンポに乗って入ってくるのに較べて、1943年の方は、音の入り方に神経質で、なんだか音を出すときに一瞬間があり、集中力を高めてより柔らかい音で出そうとしているように感じられます。テンポ感を多少犠牲にしてでも、より静かなピアノの雰囲気を出そうとしているのでしょう。
 一方、見せ場では、ここぞとばかりに劇的な表現をしています。
 途中からアレグロに変わる直前、ゆっくりとしたテンポの最後は、フォルテで和音をジャーンとフェルマータで伸ばして締めくくるのですが、長く伸ばした和音が消えた後でも、ティンパニーのトレモロだけは延々と残っています。しかもフォルテのままで。
 その伸ばし方は半端ではなく、それまでのテンポの流れを大きく断ち切っています。それまでのゆったりとした音楽とそれ以降のアレグロの音楽は一連の流れではなく、完全に別物として扱っているのではないでしょうか。
 また、曲の終盤も、どんどんテンポを速めて盛り上げていきます。
 ただ、テンポを速めるのは1927年の録音でもやっていて、加速度から言えば、むしろ1927年の方が速いくらいです。
 しかし、1927年の録音は、最後まで加速してそのまま突き抜けて行くのに対して、この録音は、最後で急にテンポを遅くして、重く終わっているのです。
 当然スピード感はなくなってしまうのですが、まさに曲の締めくくりという感じに堂々としています。まあ、スケールは大分小さくなりますがベートーヴェンの第9番の最後と同じようなもので、人によってはちょっと微妙だと感じるのではないでしょうか。

 録音状態は、それほど良くはありません。
 たしかに1927年の録音に較べて16年の歳月は大きく、響きの広がりという点でははるかに勝っています。
 しかし、雑音が多く、フォルテで音が割れ気味で、聞くのにかなり忍耐が必要になる音質なのです。
 この演奏は、今のところArchiveDocumentsからしかCD化されておらず、もともとArchiveDocumentsの復刻はそういう傾向があるので、よけいそう感じるのかもしれません。
 ぜひ他のレーベルから復刻されて、それと聞き較べてみたいものです。(2006/2/18)


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