J.ワーヘナール 「じゃじゃ馬ならし」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年10月10日
発売及び
CD番号
Q DISC(97016)
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.118)
COLOFON(CVCD7)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクはオランダを代表する作曲家であるワーヘナールの曲は2曲だけ録音を残しており、一つが「シラノ・ド・ベルジュラック」序曲、もう一つが今回採り上げる「じゃじゃ馬ならし」序曲です。
「じゃじゃ馬ならし」というのは、シェークスピアの戯曲の一つで、この曲は同名の歌劇とかの序曲というわけはなく、戯曲からイメージした単独の演奏会用の序曲なのだそうです。
 ちなみに戯曲の内容の方は、ある美しい姉妹がいて、妹の方はおしとやかで多くの求婚者がいるのに対して、姉の方はおそろしく気性が激しく、誰も求婚しようとしない。これに困った姉妹の父親が姉と結婚する者がいたら自分の莫大な財産を譲ろうと公言し、それに応じた一人の紳士が、ここは一つこの気性の激しい姉と結婚して、まるで正反対の従順な妻にできないものかといろいろと手を尽くす話です。
 その従順にするやり方というのが結構強烈で、要は妻よりももっと激しい気性を見せ付けて妻を圧倒しようというものなのです。
 もう奇行蛮行のオンパレードで、結婚式にはボロボロの服装で出るわ、家では料理人が作った料理を「こんなものを妻に食わせられるか!」と床に投げつけて妻に食事をさせず、終いには、太陽を指差して「あれは月だ」と言い切り、気性の激しかった妻に「太陽だろうが月だろうがあなたのおっしゃる通りです」と言わせるまでになります。
 やってることがとにかく極端なので非常にコメディー色が強く、シェークスピアの喜劇というと、最後にハッピーエンドになるだけで途中までは不幸なストーリーが多い中で、最初から最後まで心おきなく笑って見ていられるタイプのストーリーです。

 音楽の方も、ストーリーに合わせて、速いテンポでチャカチャカと動きまわる明るく活発な雰囲気で貫かれています。
 つくり自体も、それほど複雑なものではなく、基本はメロディー一つに伴奏というかたちで、わずかに一箇所、フーガ風に同じメロディーが少しずつずらして同時演奏されている場所が少し込み入っている程度です。
 ただ編成自体はかなり大きく、打楽器もタンバリンや小太鼓(スネア・ドラム)等多数と登場し、最後にはハープまで出てくるといった具合で、つくりが単純なことと相まって、スッキリ明快でかつ華やかな曲になっています。
 その一方で途中には、低弦によるゆったりとした優美なメロディーなどもあり、ちょっと女性的な一面も現れます。
 ただこの優美なメロディー、ワーグナーの「マイスタージンガー」前奏曲の途中に出てくる弦のメロディーのように、どんどんスケールが大きくなっていき、優美というよりも雄大な雰囲気になっていくのは、やはり気象の激しさの表れなんでしょうかね(笑)

 メンゲルベルクの演奏は、割とスッキリしたものです。
 表情の濃さよりも音のキレを重視した演奏で、テンポはあまり変えず、真っ直ぐに突き進んでいきます。
 途中の優美なメロディーも、いかにもテンポを遅くしてじっくりと歌いこみそうなものですが、意外にもほとんどテンポを変えず、勢いに乗って快速に飛ばしています。
 個人的にはもうちょっとじっくり歌いこんで欲しかったとも思いますが、その分、流れは良くスピード感があります。
 ただ、録音はさすがに今一つです。
 特に打楽器の入りが悪く、途中で効果的に入るタンバリン等の「パシッ!」という一撃がほとんど聞こえず、曲を知らないとそれがタンバリンとはわからないのではないでしょうか。
 弦楽器などはわりと聴きやすいのですが、この曲ではかなり重要である打楽器が聞こえないと華やかさが半減してしまうので、これは惜しいところです。(2004/12/11)


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