J.シベリウス 交響曲第2番 ニ長調

指揮トーマス・ビーチャム
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
録音1946年12月21、23〜24日、1947年2月8・9日、4月1日
カップリングシベリウス 交響曲第6番
発売DUTTON(HMV)
CD番号CDLX 7033


このCDを聴いた感想です。


 ビーチャムは、シベリウスを得意としていましたが、この演奏からもその様子が良く伺われます。
 曲の押さえるべきポイントがわかっているため、ここぞという部分だけ気合を込め、他の部分では少し抑え目にして音楽にきっちりとメリハリをつけています。
 さらに無駄に力を入れすぎない事で、音から力みが無くなり、涼しげな音楽に仕上がっています。
 テンポは、少し速めですが、そう極端という程ではなく、またテンポの揺れも最小限に留め、自然な流れを大切にしています。
 また、これは録音があまり良くない事も影響しているのですが、金管は総じて控えめで、全体から浮き上がってきません。一番派手な出番の筈の、第4楽章冒頭での弦楽器のメロディーを受けたトランペットのファンファーレですら、少しくすんだ音色で聞こえるぐらいで、他の指揮者のもっと金管を前面に押し出した演奏と比べると、華やかさという点では少し見劣りしています。
 しかし、色彩感が乏しくなりモノトーンに近くなる事で、逆に冷涼とした雰囲気が出て来て、身の引き締まるような、気持ちの良い冷たさが感じられます。
 メロディーも、やたらと歌わせたりせずに、むしろ淡々と歌わせているところが、上手く合っています。
 さらに、ここぞという部分だけは、ピンポイントで一気にエネルギーを注ぎ込み、音楽を一瞬にして盛り上げ、そこから急にパッと消えて失せたように引く事で、落ち着いた部分での冷たい雰囲気がより一層強調されます。
 これは特に第2楽章が良い例で、冒頭の低弦のピチカートの動きの上に乗って登場する木管のメロディーの寂しげな雰囲気と、所々に表れるフォルテやフォルティッシモの力強さとの対比が見事に生かされています。
 それに較べて、少し変わっているのが第3楽章です。
 第3楽章は、楽譜上の速度記号はヴィヴァーチェッシモ(Vivacissimo)で、かなり速いはずなのですが、ビーチャムは他の楽章と異なり、逆に少し遅めにしています。
 しかも、曲調も有るのですが、妙に力強く、他の楽章が冬としたら、この楽章だけ夏に感じるぐらいエネルギーに溢れています。
 さらに輪を掛けて特徴的なのが、中間部の、テンポ記号がレントになり、すこし落ち着いた曲調になる部分です。
 ここは、オーボエがゆったりとしたメロディーを演奏しているのですが、テンポはさらに遅くなり、なにより、そのメロディーへの熱の入れ方が、他の楽章のメロディーとは全く異なっているのです。
 テンポはルバートして伸び縮みが激しくなり、その上、一つのフレーズの中でのダイナミクスも、ピアノからフォルテまで大きく幅をつけています。
 そのため、この部分だけ一種異様な雰囲気があり、他の楽章とは明らかに一線を画しています。
 ビーチャムが、なぜこの楽章だけ雰囲気を大きく変えているのか、その意図を知りたいところです。(2002/9/13)