J.S.バッハ 「エア」 管弦楽組曲第3番 ニ長調より

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1937年12月21日
発売及び
CD番号
Refrain(PMCD-2)
オーパス蔵(OPK 2011)
HISTORY(205254-303)
BIDDULPH(WHL 024)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクは管弦楽組曲を第2番は全曲録音していますが、それ以外の3曲については全曲の録音は無く、わずかに第3番の第2曲「エア」の録音があるだけです。
 この「エア」の録音は、以前感想を書いたニューヨーク・フィル響と1929年に録音したものの他に、コンセルトヘボウ管とは、1937年(あるいは1938年)と1942年の二つの録音がCDになっています。しかし、この二つは、聴いた限りではおそらく同一の演奏で、どちらかの録音年が誤っているのではないかと思います。もしかしたら、本当にもう一種類録音が残されているのかもしれませんが、現在(2005年7月)CD化されてはいないでしょう。
 というわけで、存在を確認しているのはニューヨーク・フィル響とコンセルトヘボウ管とが一種類ずつの計二種類ですが、この二つは、オーケストラや録音年代が10年近く離れていることもあり、多少違いがあります。
 最初に目に付くのは、ニューヨーク・フィル響とが『マーラー編曲版』と明記してあるのに対して、コンセルトヘボウ管とのは何も書いてない点ですが、聴いた限りではこれは大した違いではありません。
 そもそも『マーラー編曲版』自体、原曲と違っている部分を見つけるのが難しいぐらいで、少なくとも楽器が新たに加わっているようではなく、むしろ、逆に何も書いてないコンセルトヘボウ管の方に、ニューヨーク・フィル響とでは入っていない(またはほとんど聞こえない)チェンバロがしっかりと入っているぐらいです。
 といっても、チェンバロは原曲でも加わる場合が多いのですから、あんまりマーラー編曲版だからとかそうでないからといった違いではないような気もしますが……
 繰り返しについては一つ違いがあります。
 まず原曲の楽譜では、前半の6小節にまず繰り返しがあり、後半の12小節も繰り返す、つまりちょうど楽譜全体を2回繰り返したのと同じ長さになります。
 これをメンゲルベルクは、ニューヨーク・フィル響とでは繰り返しを前半後半とも全くせず、コンセルトヘボウ管とは、前半の6小節間だけ繰り返してます。ただ、これも曲から受ける印象という点ではそう大きな違いではありません。
 ニューヨーク・フィル響とコンセルトヘボウ管との演奏で、最も大きな差は、そういう楽譜がどうこうという点ではなく、ダイレクトに表現に表れています。
 バッハの曲ですが、メンゲルベルクなのでテンポの伸び縮みは結構あり、特にメロディーが一段落ついて次に移る際には必ずといっていいほどテンポを落として余韻を持たせています。ここまでは両方の演奏に共通していますが、テンポの落とし方に違いが出ています。
 コンセルトヘボウ管との方がより滑らかで自然なのです。
 テンポの落とし方はニューヨーク・フィル響との方が激しく落ちるため劇的ではあるのですが、その落ち方が少し唐突で、そこに至るまでが低音のピチカートによって一定のテンポが保たれているという雰囲気があるだけに、どうもテンポが落ちると流れが遮られたようになりもどかしく感じてしまいます。
 コンセルトヘボウ管の方も、テンポの落ち方は、まあニューヨーク・フィル響とのほどではありませんが、ハッキリとわかるぐらい落ちているという点では同じです。しかし、そこに至るまでの落ち方のカーブが滑らかで、曲の流れに上手く乗っているため、テンポが落ちるがちょうど一息つくような感じがして、こちらはむしろテンポが落ちるのが好ましく感じられます。
 基本となるテンポは両方ともほぼ同じですが(演奏時間は繰り返しの差があるので大きく違います)、オーケストラの違いか、はたまた9年間にメンゲルベルクが少しずつ工夫していったのか、表面上はちょっとした変化ながら受ける印象は、変化以上に大きく違います。
 また、音が移り変わる際に、バロックとは思えないぐらい頻繁にポルタメントがかかっているのに、意外と音楽がくずれている(かならずしも悪い意味ではなく)印象を受けません。
 おそらく、ポルタメントがかかっている部分以外は音の変わり目がわりとはっきりとしていて、歌わせすぎずにわりと真っ直ぐに伸ばしているため、折り目正しくなっているのです。その点では、ニューヨーク・フィル響との方は、ポルタメント以外の部分の変わり目も滑らかなので、よりくずし気味で流麗といっても良いかもしれません。
 それとの対照もあり、コンセルトヘボウ管との方は、テンポの変化やポルタメントなどいろいろやっているのに、やっぱりバロックの曲だな、と納得してしまう、実は硬い演奏です。(2005/7/9)


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