J.S.バッハ 管弦楽組曲 第2番 ロ短調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1939年4月17日
発売及び
CD番号
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.112)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクのバッハは「マタイ受難曲」がなんといっても有名ですが、他にも何曲か録音を残しています。
 この管弦楽組曲第2番もその中の一つですが、演奏の傾向もマタイの演奏に近いものがあります。

 なんだか、異常にドラマチックなのですが……(汗)

 古楽器の演奏を中心に近年では多く見られるような、室内楽的で明るく軽妙なバッハ像からは、地球とアンドロメダ星雲ぐらい開きがあります。
 ひたすら、重くどっしり堂々とといった雰囲気で、管弦楽曲というよりもほとんど宗教曲のようです。
 ど頭の、序曲の序奏(…ちょっと変な言い方ですが)なんかは、それの最たるもので、ゆっくりとしたテンポでたっぷりと歌わせていて、おまけにポルタメントまでかけています。
 その粘りに粘った歌わせ方は、ひたすら重々しく堂々としていて、一歩一歩しっかりと踏みしめるような足取りで音楽が進んでいきます。
 2/2拍子の速い部分に入ってからは、テンポこそ上がるものの、音楽が堂々としていることには変わりは無く、さらに音楽のキレが良くなるため、今度は俄然迫力が増してきます。
 しまいには、最後にまた3/4の遅いテンポの部分に入る前に大きくテンポを落としたりするなど、バッハの様式にうるさい人が聴いたら、ショックで気絶してしまいそうなことまでやっています。
 さすがロマン主義全盛時代の演奏家です。音楽を劇的に盛り上げることをいかに重視しているのかよくわかります。ついでに、戦後、こういうタイプの演奏が一気に廃れたわけも何となく想像がついてくるというものです。こりゃ確かに『バロック音楽』じゃなくて、既に『ロマン派』の音楽ですね。原典尊重の潮流からは完全に外れたところにあります。

 他の6曲も大体似たような傾向にあまして、特にサラバンドは重々しさが頂点に達していて、なんだか聴いていてもたれて来るほどです。この曲は、あまりにも粘って演奏しているので、元々ゆったりとした性格の曲とはいえ、とても舞曲とは思えません。これで踊ろうと思ったら、たぶん息が詰まって倒れちゃうんじゃないでしょうか。
 一方、フルートの名曲として有名なポロネーズなんかは、曲の硬い曲調と演奏が上手く合っています。音の歯切れが良く、必要以上の重さが無くなり、適度に安定感があるため、毅然とした雰囲気を持った堂々とした音楽になっています。
 また、終曲のこれまたフルートの名曲として有名なバディヌリでは、意外と色彩感豊かな演奏になっています。
 もちろん、スコアに手を加えたりはしていませんが、ちょっとした調の変化に合わせて、パッと明るくしたり、ぐっと引き締めたり、大きく表情の変化をつけています。
 これがテンポ良くくるくると変わって行き、最後はなかなか華やかに曲が終わります。

 さて録音なんですが……あまり良くないですね。
 とにかく音が割れ気味なのがまず痛い。その上、ライブ録音にありがちなのですが、音の分離もあまり芳しくなく、ごちゃ混ぜになって聞こえてきます。
 キングとArchiveDocument双方とも、今一つなのですが、強いてあげればキングの方が若干聴きやすいかもしれません。
 でもまあ、どっちもどっちといったところですね。

 そういえば一つ気になってのですが、キングのCDの方では、第3曲のサラバンドと第4曲のブーレが通常の曲順と逆に3番目にブーレが演奏され4番目にサラバンドが演奏されています。
 ところがArchiveDocumentの方では、通常の曲順で演奏されています。
 キングのCDには、わざわざ注釈をつけて『メンゲルベルクは第3曲と第4曲を入れ替えて演奏している』旨が書いてあるので、ArchiveDocumentの方の編集ミスかと思ったのですが、8年前のスタジオ録音の際には、通常の曲順通りに演奏しています。
 メンゲルベルクは、スコアの改変等について、時代が経った後でもあまり変える方ではありませんので、キングの方の編集ミスという可能性も出てきました。
 といっても、曲順を入れ替えなかったという保証もありませんので、正確なところはよくわかりません。
 もっとも、曲順が一部入れ替わってるぐらいであれば、さほど大きな問題というほどではないでしょう。(2001/11/23)

 吉岡様より、キングの方に収録されている演奏は、コロンビアのスタジオ録音の演奏ではないかとのご指摘を頂きまして、わたしも再度その点に注意して聴きなおしてみました。
 その結果、キングに収録されている演奏は、1939年4月17日のライブではなく、おそらく1931年4月17日のスタジオ録音の方ではないかと思います。
 なお、この点に関しては、ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.112)のリーフレットにも同様の趣旨の記載があります。(2002/7/5)


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