J.S.バッハ マタイ受難曲

指揮グスタフ・レオンハルト
出演エヴァンゲリスト:クリストフ・プレガルディエン
イエス      :マックス・ヴァン・エグモント
ソプラノ     :クリスティアン・フリークナー
ソプラノ     :マキシミリアン・キーナー
アルト      :ルネ・ヤーコプス
アルト      :ディヴィッド・コーディア
テノール     :マルクス・シェーファー
テノール     :ジョン・エルウィス
バス        :クラウス・メルテンス
バス        :ペーター・リカ
演奏ラ・プティット・バンド及び男声合唱団
テルツ少年合唱団
録音1989年3月1〜8日
販売BMGジャパン
CD番号BVCD-1656-58


このCDを聴いた感想です。


 以前、「ヨハネ受難曲」について書きましたが、今度は「マタイ受難曲」です。
 こちらも、ヨハネ同様「マタイによる福音書」の一部に音楽をつけたものです。
 これを見た方の中には、「あれっ? メンゲルベルクの演奏じゃないのかな」って思った人もいらっしゃると思います。
 確かにメンゲルベルクの演奏を語る上で「マタイ受難曲」ははずせませんし、もちろんわたしも大好きで、わたしの持っている「マタイ受難曲」の中では一番聴く機会が多いのですが(といっても5種類しか持っていませんが…)、メンゲルベルクはまた別の機会に譲って、今回はメンゲルベルクとちょうど真反対のスタンスのレオンハルトを取り上げたいと思います。

 実はわたしがこのレオンハルトの演奏を購入したのはだいぶ後の方で、それまではメンゲルベルクやリヒターに代表される、どちらかというと重々しいマタイしか知りませんでした。
 このレオンハルトの演奏は古楽器らしくキビキビした速いテンポで進んで行くのですが、それよりも驚いたのはイエスの声です。
 それまでは、イエスというと預言者のイメージが先に立ち、厳かで威厳の有り、割と神性の面が強調されていました。
 ところがこのCDのイエスは非常に若若しく、親しみが感じられ、より人性によったアプローチがされています。
 これを聴いていると、確かにイエスは縁遠い自らの手が届かない伝説上の人物では無く、いつも身近に感じられる「生きている」イエスの存在が感じられます。
 しかも良く考えて見ますと、イエスが磔にされたのは30歳ぐらいのはずですから、若若しい声でも何の不思議もないですよね。

 イエスの声以外の部分でも、無理にドラマティックな面を強調したりはしていません。
 あくまでも普段着に近く、なおかつ純粋な美しさが感じられます。
 そういった点では「清楚」という言葉が相応しいかもしれません。
 もちろん、ドラマティックな面を強調してないからといって、盛り上がりに欠ける退屈な演奏というわけではありません。
 例えば群集がイエスを「十字架に架けろ!」と叫ぶ合唱では、フォルテはフォルテですが、決してフォルティッシモにはならず、フォルテの中で微妙にダイナミクスを変えることで、かえって群集の恐ろしさがよく伝わってきます。

 この演奏の面白いところは、歌手が独唱から合唱まで全て男声で構成されているところです。
 もしかしたら、もう珍しくないのかもしれませんが、わたしはアルトをカウンターテナーで構成されている演奏は聴いた事がありましたが、ソプラノまで全て男声という演奏は聴いたことがなく、新鮮な感じがしました。
 全体的にはほとんど違和感が無く、確かにボーイソプラノはかなり違いが出ていましたが、それはそれでいかにも天使の歌声という感じで、別の楽しさがあります。
 この演奏はテンポが速い方ですが、それでも全曲の演奏には3時間近くかかります。
 でも聴いていてそれを感じさせない演奏でした。(2000/1/14)


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