J.S.バッハ カンタータ第57番「試練に耐えうる人は幸いなり」

指揮ウィレム・メンゲルベルク
出演ソプラノ:ジョー・ヴィンセント
バリトン:マックス・クロース
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
アムステルダム・トーンクンスト合唱団
録音1940年11月7日
発売及び
CD番号
キング(KICC 2063)


このCDを聴いた感想です。


 バッハの書いたカンタータには「コーヒー・カンタータ」のような世俗的なものと、教会用の宗教的なものがありますが、この第57番は教会カンタータと呼ばれる宗教的なもので、降誕祭第2日目という教会暦の祝祭日のために書かれた曲です。
 全曲で20分強の、カンタータとしてはまあ一般的な演奏時間で、アリアが4曲、レチタティーヴォが3曲、コラールが1曲の、全8曲で構成されています。
 歌手は、基本的に『イエス』(バリトン)と『魂』(ソプラノ)の二人だけで、最後のコラールのみ合唱となります。ただ、演奏によっては、合唱ではなく独唱者二人にアルトとテナーの独唱者を二人加え、四重奏にしているものもありました。
 歌詞の内容は、そう変わったものではなく、神への愛を献身的に訴える魂に対してイエスが優しく導くといった内容で、まあいかにも教会カンタータらしい内容です。
 このカンタータの面白い特徴は、歌詞ではなく別のところにあります。
 実は、全てのアリアとコラールは、テンポの違いこそあれど、全て3拍子なのです。レチタティーヴォは一応4拍子ですが、あまりキチンとした拍子があるわけではないので、要は拍子がある曲は全て3拍子ということです。
 わたしはカンタータに全然詳しくないので断言してはまずいのかもしれませんが、ここまで徹底しているのはちょっと珍しいのではないでしょうか。
 ただ、拍子こそ同じですが、テンポなどは異なっていますので、雰囲気は曲ごとにかなり差があります。
 第5曲のアリアのように速いテンポ(ヴィヴァーチェ)で弦楽器が軽快に音を刻みながら疾走する派手な曲がある一方、第7曲のように通奏低音以外の伴奏はほぼヴァイオリンソロだけという感傷的な曲もあったりと、いろいろバラエティーに富んでいます。

 メンゲルベルクの演奏は、有名なマタイ受難曲の演奏に通じるようなテンポをゆっくりと幅広く取った大時代的なものですが、あそこまで派手ではなく、編成が小さいこともあって大分大人しい演奏です。
 通奏低音をパイプオルガンではなくチェンバロのアルペジオにする辺りはマタイ受難曲と共通していますが、テンポはマタイよりもはるかに一定を保っています。ただ、もちろん最初から最後まで一定ではなく、ここぞというところで大きくテンポを落とすところはいかにもメンゲルベルクらしいのですが、そういう力を入れて強調するところ以外は意外と大きくは動かしていません。
 また、おそらく人数自体は多いのでしょうが、楽器を増やすといった強化策はとらず、編成はほぼ原曲通りで響きだけが分厚く重くなっています。
 一部、ダ・カーポするアリアは、ダカーポした後に主部を全部繰り返すのではなく、序奏だけを演奏してそこで止めていますが、それはメンゲルベルクがいつもやっていることですし、やむをえないでしょう。もっとも、序奏で止めていても、完全に繰り返す他の演奏よりも演奏時間が長い辺り、いかにベースのテンポが遅いかお分かりいただけるかと思いますが。
 全体を通しての印象としては、やはりドラマチックな演奏です。敬虔というには少し静けさが足りないようですが、その分、オペラのように劇的に盛り上がり、カンタータというよりも、マタイのような受難曲に近い雰囲気になっています。
 おそらくバッハのいわゆる正統的な演奏からはかなりずれていますが、そこさえ気にならなければ、訴えかける力は強い演奏だと思います。(2005/4/16)


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