J.シュトラウスII ワルツ「ウィーンの森の物語」

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1927年1月10日
販売及び
CD番号
Pearl(GEMM CDS 9922)


このCDを聴いた感想です。


 新年(2002年)初めての更新ですので、ここは新年らしくヨハン・シュトラウス二世のウィンナーワルツを取り上げたいと思います。

 と、考えたまでは良かったのですが、よくよく考えてみると、メンゲルベルクはヨハン・シュトラウスのワルツをほとんど録音していません。
 やはり、ウィーンにはあまり縁が無かった所為でしょうかね?
 ウィーン・フィルとの録音も、二曲しか残っていませんし……
 ヨハン・シュトラウスのワルツの録音となると、この『ウィーンの森の物語』こそ二回録音していますが、これ以外のワルツとなると、この演奏と同日に録音した『芸術家の生涯』の一曲きり。しかも、全てニューヨーク・フィルとの録音で、コンセルトヘボウ管とですらありません。
 ワルツ以外でも、以前取り上げた『常動曲』を一曲録音しているだけで(これはコンセルトヘボウ管とでした)、後はヨハン・シュトラウス二世はおろか、他のシュトラウス一家やヨーゼフ・ランナーの曲ですら、一曲も残していません。
 強いてあげれば、ワルツつながりという事で、チャイコフスキーの『弦楽セレナード』の第2楽章のワルツを録音があるくらいでしょうかね?
 そうそう、そういえば、チャイコフスキーなら交響曲第5番の第3楽章もワルツでしたが……
 ただ、このワルツはウィンナーワルツではありませんしね。
 結局、メンゲルベルクのウィンナーワルツというと、この『ウィーンの森の物語』が2種類と『芸術家の生涯』が1種類あるきりです。
 ついでに書いておきますと、この三つの録音は全て1920年代です。
 メンゲルベルク本人がワルツの録音に乗り気ではなかったのか、それとも機会がなかったのか、なぜか1930年代以降はウィンナーワルツは録音されずライブ録音も残っていません。ただ、もしかしたら録音には残っていないだけで演奏会では演奏していたのかもしれません。マーラーやマイアベーアと違ってナチスに禁止されていたということも無かったでしょうし。

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、この『ウィーンの森の物語』の演奏の話に移ります。
 と、その前に、まず最初にお断りしておかなければならないのですが、このワルツ『ウィーンの森の物語』は、本当にワルツ部分しかありません。
 この曲を聴いたことのある方はご存知かと思いますが、この曲の演奏時間は、大抵は10分から13分ほどで、ヨハン・シュトラウス二世のワルツの中ではかなり長い方です。
 それが、メンゲルベルクの演奏では、4分30秒しかありません。
 どういうことかというと、初めのゆったりとした序奏の部分と中間のゆったりとした部分が全てカットされているのです。
 当然ながら、『ウィーンの森の物語』の大きな特色ともいえるツィターも全く出てきません。
 これで本当に『ウィーンの森の物語』と言えるのだろうか? という気も大分するのですが、おそらく録音時間の制限上止むを得なかったのでしょう。
 演奏時間の4分30秒というのは、当時の原盤1枚にだいたいピッタリに収録できる時間です。
 だからこそ、本来は10分を越えるような曲を、1枚に収まるように無理矢理カットしたのでしょう。
 もちろん、当時も大曲なら原盤2枚、3枚に渡って収録する場合もありましたが、予算の制限もあるでしょうし、『ウィーンの森の物語』ならカットしても大丈夫と踏んだのでしょう。

 また余談が長くなってしまいました。
 肝心の演奏の方ですが、テンポはかなり動きます。
 初めのうちはまだゆっくりなのですが、音楽が盛り上がるにつれてテンポはどんどん速くなっていきます。
 少なくともこのテンポで踊るのは、まず不可能ですね。
 あくまでもコンサートの一曲として聴くための曲と考えた方が良さそうです。
 さらに、テンポはただ速くなるだけでなく、音楽の変わり目変わり目では、大きくテンポを落としてそこからまたテンポを速くして行くので、聴いているとまるでテンポが無限に速くなっていくかのように錯覚します。
 そして、一番重要なリズムですが、わたしもウィンナーワルツにそれほど慣れている訳ではないのですが、ゆったりとした部分では2拍目が早めで3拍目が遅めという一応ウィンナーワルツっぽいリズムになっています。
 しかし、テンポが速くなってくると、演奏する方はだんだん細かい揺れまで気にする余裕が無くなって来て、最後は単なる3等分した3拍子になってしまっているようです。
 それでも、1923年の第1回目の録音よりは、大分余裕が感じられゆったりとした雰囲気になっています。
 ただ、全体的にはウィーン風の優雅さとか華やかさとはほど遠いようで、良く言えば『引き締まった』、悪く言えば『ギチギチに締め付けられた』演奏で、舞踏会というより軍隊に近いようなイメージです。

 録音は1927年にしては、まあ良い方ではないかと思います。
 といっても、これは1923年の第1回目の録音と比較しているからで、なんといっても第1回目はまだ機械録音なんですから、それに較べたらどんな録音でも良くは聞こえますわな。
 それでも、さすがに楽器の一つ一つの音は難しいとしても、全体の雰囲気はちゃんと伝わって来るのですから、そんなに悪くは無いでしょう。(2002/1/4)