J.シュトラウスII 皇帝円舞曲

指揮アルトゥール・ロジンスキー
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
カップリングJ.シュトラウスII ワルツ「美しき青きドナウ」他
録音1955年5月10日
発売MCAビクター(Westminster)
CD番号MVCW-18006


このCDを聴いた感想です。


 ロジンスキーの演奏というと、速いテンポに硬いアタック、なにより緊張感が高いというイメージがあります。その一方で、ウィンナ・ワルツというと、わざと崩したテンポに乗った優雅な雰囲気というイメージがわたしにはあり、どう考えても、ロジンスキーのスタイルとは対極です。しかも、オーケストラはロイヤル・フィルですから、オーケストラの自主性に任せれば自然にウィーン風になるという選択肢もありません。(もっとも、仮にウィーン・フィルの演奏だったとしてもロジンスキーがオーケストラの自主性に任せる可能性は低いでしょうけど) そこで、ロジンスキーが、ロイヤル・フィルでウィーン風に優雅を目指すのか、それとも、ウィーン風自体をすっぱり切り捨てるのか、興味深々で聴いてみました。
 結果は、まあ、ロジンスキーはやっぱりロジンスキーでした。
 たぶん、ウィーン風から最も遠い演奏の一つではないでしょうか。
 実は、ロジンスキー自身は、活躍の場こそアメリカですが、もともとはクロアチア出身で、大学時代はウィーンで生活していますから、ウィーンとの関わりはむしろ深い方です。大学だけでなく、指揮者になってからも、ウィーン国立歌劇場管とはフランクの交響曲やウィーン・フィルの首席奏者のウラッハをソリストに迎えてモーツァルトのクラリネット協奏曲を録音するなど、晩年に至るまでその関係は続いています。
 CDの解説書にも、ウィンナ・ワルツを感覚的にわかっているロジンスキーが、あまりウィンナ・ワルツに馴染みのないロイヤル・フィルの演奏者に、ウィーン・スタイルについて粘り強く指導したエピソードが紹介されています。
 しかし、ロジンスキー本人はウィーン風の演奏を求めていたのかもしれませんが、わたしの聴く限りでは、やっぱりどう聴いてもウィーン風には聞こえません。
 いや、たしかによく聴くとリズムの扱い方など、ウィーン風かなと思えなくもないところもあるのですが、それ以外の個性があまりに強すぎてウィーン風を完全に覆い隠しています。
 最も重要なワルツのリズムでは、1拍目が強いのは万国共通として、ウィーン・フィルの演奏などを聴いていると、2拍目にも重さが乗り、1拍目で体重をかけて踏みしめた重みをさらに前に滑らすような感じになり、3拍目は、次の小節の1拍目に向けての準備動作という風に、まさに踊りに合わせた円運動の動きになっています。
 ところが、ロジンスキーの演奏では、1拍目が非常に強く、しかも硬いアタックが付いているため、いくら2拍目と3拍目をウィーンっぽくしても、それがすっかり霞んでいるのです。
 小節の頭に叩き込むようなアクセントが付き、それが毎小節規則的に続くため、円を描くようなワルツから遥かに遠く、むしろ直線に進んで行く軍隊式のマーチに聞こえてきます。
 これは、硬いアタックだけでなく、音に力があり、緊張感が高いためよけいにそう聞こえます。
 さらに、速いテンポをずっと保っているところもロジンスキーらしいところでしょう。
 この曲は、曲の中にワルツが4種類登場して、ワルツ同士は、数小節の「つなぎ」でつながっている場合が多く、そのつなぎは、その次のワルツにつなげるため、ウィーン・フィルなどの演奏では、少しテンポを落としたり、雰囲気を変えたりして、新しいワルツに期待感を持たせるようにしていますが、ロジンスキーは、あまりそうしていません。
 テンポを速いまま保ち、そっけないぐらいにあっさりと次のワルツに入って行きます。
 そのゴチャゴチャさせずにスパッと行っている点は、ここまで来るとむしろ気持ち良いぐらいです。
 ウィーン風の演奏を期待すると、物足りないでしょうが(もっとも、ロジンスキーの演奏で、それに期待する人は少ないと思います)、突き刺さるような緊張感の高い皇帝円舞曲というのは、逆にウィーン本場から外れているかこそできることです。この点では、まさにわたしの期待通りで、聴いていて嬉しくなりました。
 後、一つ注意点がありました。
 この曲には、大きなカットがあります。
 以前に感想を書いたライナーの演奏と同じで、終盤、コーダのゆっくりとしたテンポの部分を丸々カットしています。その点はご注意ください。(2010/1/9)


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