J.シュトラウスII 皇帝円舞曲

指揮フリッツ・ライナー
演奏シカゴ交響楽団
録音1957年4月15〜16日
発売RCA(LIVING STEREO)
CD番号09026-68160-2


このCDを聴いた感想です。


 新年最初の更新はやはりシュトラウスでしょう。
 というわけで数多いヨハン・シュトラウス2世のワルツの中でもメジャーな一つである皇帝円舞曲です。当然ボスコフスキーなど本家ウィーン・フィルを振った録音もいくらでもありますが、今回はライナーがシカゴ響を振った録音です。
 ライナーは、まだオーストリア=ハンガリー帝国としてまがりなりにも一国としてまとまっていた時代のハンガリー出身ですから、ウィンナ・ワルツも一応お国物といえないこともないでしょう。一方、オーケストラはウィーンからははるか遠いシカゴです(もちろん、メンバーにオーストリア出身がいる可能性はあります)。ただし、このオーケストラは、ウィンナ・ワルツには慣れていませんがライナーの指揮には慣れています。
 演奏の方も、そんな関係がそのまま音に表れたかのようです。
 ワルツのリズムの取り方は、たしかに直線的ではなく、ウィーン風に緩やかにカーブを描いています。メロディーの歌い方も柔らかく丸みがあり、アクセントにしても優しく跳ねるようで、決して硬い音で鋭くぶつけたりはしません。
 オーケストラの方も、そういうライナーの意図を忠実に反映しています。きっとライナーのほんのちょっとした仕草も見逃さずキチンと音にしています。
 ただ、それがあまりにも精密すぎるような気がするのです。
 わたしのイメージでは、ウィンナ・ワルツ、とくにニューイヤーなどは、その場のノリと勢いが結構重要なポイントではないかと思っています。悪く言えばいい加減なのですが、そのいい加減なところが逆にお祭りらしい華やかさを生む大きな要素なのです。
 ところが、このライナーの演奏はあまりにも端々までキチンとしているため、例えば、舞踏会の風景を映像ではなく写真として写したように、たしかに細かい部分までブレなく鮮明に捕らえているものの、陽気さといった祝祭的な雰囲気は直接感覚としては伝わってこないのです。なんだか見て理性的に「なるほど楽しい雰囲気なんだな」と推測しているかのようです。
 新年の舞踏会というよりも、ちゃんとした演奏会でステージ上で演奏されているのを聴く感覚ですね。もっとも、もともとライナーもそういう趣旨で録音したのかもしれません。
 このように、祝祭的な雰囲気は強くないのですが、その分、細やかな表現の豊かさでは他の演奏を圧倒しています。まさに全体が一体となってニュアンスが整えられ、場面場面で瞬時に雰囲気を変えていきます。
 特に、フォルテよりもピアノでの軽さや柔らかく丁寧な響きは魅力的でした。
 そのフォルテも、整っていても威圧的ではなく、柔らかさのある明るい響きです。その明るい響きが勝手気ままに放射しているのではなく、見えない線で仕切られているかのようにある一定の枠内にピッタリと収まって内側に充実しているあたりが、いかにもライナーらしさを感じました。

 また、この演奏はかなり大きなカットがあります。
 コーダに入って少し先で約40小節、さらに終盤のテンポがゆっくりになる部分を丸々カットしています。おまけに、ワルツにはよくある繰り返しが全てカットされストレートで先へ進んでいます。
 たいてい10分以上になる演奏時間は、わずか7分30秒程度しかありません。
 おそらく最短の演奏の一つでしょう。(2006/1/7)


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