J.シュトラウスII 皇帝円舞曲

指揮エーリッヒ・クライバー
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1932年
発売archiphon
CD番号ARC-102


このCDを聴いた感想です。


 せっかく(?)新年ですので、ヨハン・シュトラウス2連発で行ってみたいと思います。

 エーリッヒ・クライバーのシュトラウスのワルツといえば、あらえびす氏の「名曲決定盤」にも取り上げられた「美しき青きドナウ」が有名ですが、実は、この「美しき青きドナウ」だけ、エーリッヒ・クライバーが録音した他のワルツよりも録音が飛び抜けて古く、電気以前の機械録音ですので、聴くのに少し根性が要ります。
 まあ、他のワルツも、せいぜい1920年代末から1930年代頭の録音ですから、力説するほどの録音の良さという訳ではないのですが、さすがに電気録音だけあって、「美しき青きドナウ」よりは大分聴き易い音質です。
 今回は、その中から代表的なワルツという事で、この「皇帝円舞曲」を取り上げました。

 さて、「皇帝円舞曲」の演奏ですが、かなり面白い演奏です。
 ただ、聴いた時に最初に気がつくのは、あまりにもテンポが速い点ですが、これはもしかしたらクライバーの意志ではなく、録音時間の制限によるものかもしれません。
 ちょっとビックリするぐらいのテンポですし、楽譜のカットこそしていないものの、繰り返し記号は全て無視していますし、原盤2枚で8分20秒という演奏時間を考えると、テンポをとにかく速くして、無理矢理2枚に収めたように思えます。
 テンポを別とすると、なんといっても、メロディーの歌わせ方に驚かされます。
 こんな派手な歌わせ方をした皇帝円舞曲というのは初めて聴きました。
 ピアノからフォルテのダイナミクスの幅が大きく、その上、メロディーにはポルタメントやビブラートをたっぷりかけて目一杯歌わせているのです。
 特に、フォルテの部分は、『力いっぱい』という言葉がピッタリ当てはまるような歌わせっぷりで、さらに金管楽器や打楽器の叩きつけるようなアタックがそれに加わる事で、正しく『皇帝』という名に相応しいような堂々とした迫力満点の音楽になっています。
 一方、ピアノの部分はそれ以上で、フォルテの部分にあったポルタメントやビブラートはそのままに、しかも叩きつけるようなアタックが無くなり暴力的な雰囲気ではないのにもかかわらず堂々とした威厳までそのままに保っているため、貴族的な優美さに満ち溢れているのです。
 もう、音楽の隅から隅までエネルギーが感じられ、ほんの小さなフレーズすら思いっきり存在感をアピールしています。
 これは、『華やか』という言葉では表しきれません。やはり『派手』と言いたくなります(笑)
 ヨハン・シュトラウスのワルツで、ここまで『凄くて』『面白い』演奏は、なかなか無いのではないかと思います。

 ちょっと気がついた話なのですが、ワルツに入る前の序奏の部分で、頭から41小節目で、ホルンが『タッタタター、タッタタター』という合いの手を演奏していて、これがまた非常に格好良いのですが、実はわたしの持っている総譜にはそんな音符は書いてありません。
 わたしは、これはまたクライバーが独自に楽譜を改変したのかと思いましたが、他の演奏を聴いてみると、何とその演奏でもホルンが合いの手を吹いているのです。
 そこでハタと思い当たりました。ヨハン・シュトラウスの場合、曲によっては版がいくつかあるものがあります(必ずしもヨハン・シュトラウス本人の編曲とは限りませんが)。
 このホルンが入った楽譜も、おそらくその一つなのでしょう。(2003/1/4)