J.シュトラウスII 喜歌劇「こうもり」序曲

指揮ブルーノ・ワルター
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1938年
カップリングJ.ハイドン 交響曲第92番<オックスフォード> 他
「Viennese Night」の一部
発売Pearl(HMV)
CD番号GEMM CD 9945


このCDを聴いた感想です。


 「ワルツ」は日本語で書くと「円舞曲」ですが、この演奏は全然「円」ではありません。
 数小節間で一気に加速したかと思うと、ピタッと止まり、一瞬の静寂の後、今度はそれまでのテンポが嘘のように極端に遅いテンポで復帰してそこからまた加速していきます。一直線に突っ走っていき、ピタッと止まって、ゆっくりと振り返って、そこからまた一直線に元の場所に戻ってくるという感じで、まるで陸上競技のインターバルトレーニングを見ているみたいです。速くなって急に遅くなりまた速くなるという繰り返しなので、たしかに同じパターンがずっと続くという点では、ワルツと同じと言えなくも無いのですが、ワルツの場合はぐるっと円を描いて滑らかにもとの出発点に戻ってくるのに対して、この演奏は円ではなく直線と鋭角で構成されています。
 もはやウィンナ・ワルツどころかワルツですらないので、優雅なワルツを期待すると愕然とします。むしろワルツではなくもっと荒々しい舞曲だと考えると、強引に力で押し切ったみたいで、なかなか面白く聴けます。ウィンナ・ワルツではちょっと無いほど大きくテンポ変化しているため、劇的な盛り上がりが生まれています。
 指揮をしているのはワルターですから、それこそウィンナ・ワルツはお手の物だと思いますが、それがこういうワルツになっているというのは、ワルターがウィーンのオーケストラではできないことをやろうとしたのか、それともパリ音楽院管だからこういう解釈しかできなかったのかちょっと興味を引かれるところです。
 ただ、音色はあまりパリ音楽院管らしくないと思いました。
 録音があまり良くなく、ちゃんと聞き取れていないのかもしれませんが、響きもフランスのオーケストラらしい軽いものではなく、分厚く響いています。それでも、低音が強く出ているものの、和音の土台といった重い音ではなく、メロディーらしく動きが良いところは、ちょっとフランスらしさを感じましたが。
 管楽器の音色も、なんだか厚みがありすぎるような気がしますし、もし、これでアンサンブルがもっと整っていたら、ドイツのオーケストラの演奏と言われても、そんなものかも、と信じてしまっていたかもしれません。
 上でも書きましたが、録音状態はかなり酷いものです。雑音が多く、細かいところまで聞き取れないのもさることながら、一番まいったのが割れと歪みです。非常に聴き辛く、正直言って好事家向けでしょう。
 録音は、単に1938年としか書かれていませんでしたが、同年の1月にウィーン・フィルを指揮した有名なマーラーの第9番の演奏があり、3月にナチスによるオーストリア併合が行なわれていることを考えると、おそらくその後の活動の中心をパリに移した時代の演奏だと思います。むしろそういった歴史的な点こそがこの演奏の価値かもしれません。(2007/3/10)


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