J.シュトラウスII ワルツ「美しく青きドナウ」

指揮イーゴル・マルケヴィッチ
演奏フィレンツェ5月祭管弦楽団
録音1946年5月25日
カップリングアンネン・ポルカ 他
「The King of the Waltz」の一部
発売TAHRA(Cetra)
CD番号TAH 358/361


このCDを聴いた感想です。


 よく吹奏楽では原曲がオーケストラの曲を演奏するために、吹奏楽の編成に合わせて楽器を変更するという編曲をすることがあります。その場合でも多くの編曲ではできるだけ音色の近い楽器に担当させることで原曲の雰囲気を残すようにしています。
 楽器編成が異なる吹奏楽でも原曲に近づけようとしているのに、この演奏では、同じオーケストラにもかかわらず、普段聞き慣れている演奏とあまりにもかけ離れているのに驚かされました。
 まるで原曲の雰囲気をあえて叩き割るような大胆な編曲を施して演奏しているのです。
 とはいえ、冒頭のヴァイオリンが高音でサラサラと音を刻むところは、原曲と全く同じです。
 そこだけ聞いている間は、この演奏がまさか編曲されていようとは夢にも思いませんでした。
 しかしその印象が続いたのもたった冒頭の1小節のみ。早くも次の第2小節で耳を疑いました。
 本来ならホルンが分散和音のメロディーを吹くところですが、ホルンは登場しません。
 代わりに分散和音のメロディーを演奏するのは、なんとティンパニーのしかもソロ。
 滑らかなホルンのメロディーが出てくるものとばかり思っていたのにいきなりティンパニーの低い「ボン、ボン、ボン」という音なのです。
 さらに、曲が進むにつれ、そんなのは序の口ということを思い知らされました。
 原曲は華やかな雰囲気とはいえ、メロディーに後打ちのリズムが中心でそれに多少伴奏が絡むくらいの、良くも悪くもシンプルな構成だったのに比べ、なんだか大道芸みたいにバラエティーにとんだ編曲になっています。
 メロディーを担当する楽器は弦楽器から木管や金管に変わっていたり、しまいにはヴァイオリンのソロまで登場するなど音色としても数倍のバリエーションが増えていますが、そのメロディーの楽器の変更よりもすごかったのがメロディーを彩る伴奏です。
 原曲の伴奏は、ほとんどがワルツらしい2、3拍目のリズム打ちで、対旋律などはほとんど出てこなかったのですが、この編曲では、対旋律はもちろん、いろいろ怪しげな合いの手みたいな短いメロディーが瞬間芸のように手を変え品を変え楽器を変え次々と登場します。
 なんだかメインのメロディーよりもこちらの方が目立って聞こえるぐらいです。
 この編曲だけでも原曲から大きく足を踏み外しているのですが、事態はそれだけに留まりません。
 マルケヴィッチの演奏がさらにそれに輪をかけています。
 間違えても踊れるテンポではありません。
 ワルツ部分は超高速で、ウィンナワルツどころかほとんどスケルツォみたいですし、さらに、途中でテンポは頻繁に伸び縮みします。
 とりあえず、音楽を盛り上げるために途中からのテンポアップは必須で、しまいにプレスト並みになったところで、急にテンポが落ちたかと思うと、メロディーをゆっくり大きく歌わせます。
 音楽には緊張と緩和があった方が良いとはいえ、ワルツでここまで極端に緊張と緩和を繰り返す演奏というのは初めてです。
 編曲と演奏とも、ここまでくると「美しく青きドナウ」の演奏というよりも、ほとんど同曲のパロディーと言った方がよっぽど近いんじゃないでしょうか。
 まさに印象に残るという点では抜群の演奏でした。

 演奏しているオーケストラは、CDには「Maggio Musicale」としか書かれていませんでしたが、いろいろ調べてみた限りどうやらフィレンツェ5月祭管弦楽団(Maggio Musicale Fiorentino)のようでしたので、そう記載しました。もし、本当はこれが正しいというのをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えて頂きたいと思います。(2007/1/6)


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