J.シュトラウス1世 ラデツキー行進曲

指揮レナード・バーンスタイン
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1970年10月20日
カップリングスーザ ワシントン・ポスト 他
「バーンスタイン マーチ名曲集」より
発売CBSソニー
CD番号30DC 752


このCDを聴いた感想です。


 以前取り上げたバルビローリの演奏(ヤコブス編曲)もそうでしたが、ウィーン・フィルがニューイヤーコンサートで演奏する管弦楽法とは異なる編曲による演奏がたくさんあります。吹奏楽版では大きく異なるのは当然としても、管弦楽版でも、ウィーン・フィルと多少異なるものから、細部が大きく違うものなど様々な編曲で録音されています。バーンスタインの演奏も、そういった編曲版の一つではあるものの、驚いたのは、他の演奏ではあまり見かけない妙な編曲があちこちに登場することです。
 一番驚いたのは前奏部分です。この曲の前奏は2/2拍子で8拍ほどの短いもので、その8拍目は、ウィーン・フィル版では完全に休止符です。一部の演奏では、バスドラム(大太鼓)の一発が入ることがあり、わたしは曲が締まってよいと思うのですが、品が無いという評判も良く耳にします。吹奏楽版で多く見られる編曲だと思っていましたが(たしか高校時代に吹奏楽で演奏した時には楽譜にそういう指示が記載されていた覚えがあります)、改めて手持ちの演奏を聴き直すと、吹奏楽版ではバスドラムを入れている演奏は一つも無く、逆に管弦楽版で何種類かありました。どちらにしろ、編曲するとすれば当然バスドラムを入れるか入れないかの2択でしょう。しかし、バーンスタイン版はその斜め上を行っていました。
 よもや、休符でもバスドラムでもなく、トランペットの8分音符3つが入ってくるとは。
 イメージとしては、トリオに入る前のトランペットの動きの頭3つ分と考えてください。さすがにそんな編曲は他では聴いた事がありません。良い悪い以前にあっけにとられます。
 さらにトリオの前のつなぎの部分も一味違います。この部分は、上記にもあるようにトランペットが8分音符で同じ音を連続して並べていきます。
 これをバーンスタインは、その8分音符の最後の3つの音に木管とホルンの「ファミレ」という音階を加えています。ちょうど次のトリオへの導入となっているわけです。
 さすがにこの部分に手を加えたのはバーンスタインだけです。手持ちの演奏では、吹奏楽版であろうが、かなり変えているバルビローリ版だろうが、全てトランペットの8分音符のみです。
 この音階が入ることで、トリオへの入りはむしろ自然に入っていくのですが、自然なのが逆に不自然で、なんというかなし崩しにトリオに入っていくようで、すごくおせっかいをされたような気分になってしまいます。
 また、編曲しているというほどではないものの、演奏の仕方が妙な部分もあちこちに見られます。
 例えば主部なんかは、前半のピアノ部分はそれほど他の演奏と違いがないと安心しているとフォルテに入ってからのけぞる羽目になります。
 まず、妙に頭にアクセントが強く入っています。さらに展開部に入ってからは、急にトロンボーンがソロかと思うくらいに前面に出てきます。実は、動き自体は低弦などのバスと同じ動きをしているだけなのですが、バランスが異常に強く、完全に他を圧倒しています。しかし、この演奏のトロンボーンを聴いて同じ動きをしている楽器を探しているうちにバスが同じことに気付いたぐらいで、それまでバスの動きなんて気にも留めなかったわけですから、これは広い範囲に耳を向けさせてくれたことに感謝しています。
 それにしても、編曲のためもあり、ウィーン・フィルの演奏から最も遠いものの一つではないでしょうかね。もしかしたら演奏がアメリカのニューヨーク・フィルだからかなり好きにやれたのかもしれません。いくらバーンスタインでもウィーン・フィル相手ではどうしてもウィーン風になってしまうでしょうから、遠すぎるアメリカではなく、ヨーロッパのオーケストラ、それもウィーンの影響を受けにくいロンドン辺りのオーケストラで演奏したらどうなるか、どれぐらい折衷案になったりするのかちょっと聴いてみたかったところです。(2012/1/14)


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