J.P.スーザ 行進曲「雷神」

指揮ジョン・フィリップ・スーザ
演奏フィラデルフィア・ラピッド・トランジット・カンパニー・バンド
録音1926年9月4日
カップリングJ.J.ワーグナー 双頭の鷲の旗の下で 他
「The March of John Philip Sousa」の一部
発売Pearl(Victor)
CD番号GEMM CD 9249


このCDを聴いた感想です。


 スーザ本人による自演の録音です。録音した年は1926年と古く、観賞用というよりも資料的価値に意義がある録音ですね。それでもスーザが亡くなったのは1932年ですから晩年に近く、他の自演の録音は、有名な「星条旗よ永遠なれ」が1909年だったりと旧式な機械録音(アコースティック録音)が多く、曲がりなりとも電気録音であるこの演奏は、スーザ本人の録音としてはまだ聴きやすいほうでしょう。
 さらに、演奏している団体も、スーザ自らが長年率いてきた「スーザ・バンド(スーザ吹奏楽団)」ではなく、「フィラデルフィア・ラピッド・トランジット・カンパニー・バンド(The Philadelphia Rapid Transit Company Band)日本語に訳したらフィラデルフィア高速交通バンドといったところでしょうか」という団体です。フィラデルフィア・ラピッド・トランジット・カンパニーというのは、当時のフィラデルフィアの市街電車網から地下鉄までもの交通機関を一本に統合した会社だそうで、このバンドがその企業がスポンサーとなったバンドなのか、それとも単なるアマチュアの職場バンドなのかはよくわかりません。
 技術的にはどうかというと、聴いた感じでは、聴くに堪えないというほどではないのですが、そう上手いわけでもないようです。なにぶん録音が古過ぎて、細かいところまではさっぱりわからないため判断付きかねるところです。
 縦の線はだいぶ怪しく、トランペット辺りは、リズムもあまり揃っていません。特に途中でメロディーとメロディーのつなぎの部分なんかでよく登場するファンファーレ風に同じ音でリズム刻む動きなどは、タンタカタンタンターと歯切れ良く聞こえるはずが、プワンプワカプワンプワンプワーンと各奏者の動きがずれて音が重なってモワモワしています。
 そもそもそのリズム自体も、テンポにはまっていなくて、ツッコミ気味だったり後ろに引っ張られ気味だったりとどうもムラがあります。
 ただ、縦の線が揃っていないのは、編集ができず一発録音だった当時ではそれほど珍しくはありませんから、必ずしもアマチュアとは限らないでしょう。リズムは怪しいものですが、音自体はしっかりと出ていますし、不安定さを感じさせないところは、まともなものです。
 楽器のバランスについては、この時代の録音で語るのは白黒テレビで絵画を鑑賞するようなもので的外れの可能性が高いのですが、動きを良く聞かせようとしているように感じました。
 初めてメロディーが登場するときはメロディーを出し、繰り返して同じメロディーに新しい対旋律が絡んでくると、その対旋律を強めに出して、飽きさせないようにしています。
 このバンドではなく、スーザ・バンドの方でしたら、なんでも小耳に挟んだところによると、楽譜に書かれていない、演奏効果を上げるためのスーザ秘伝のテクニックがあったらしいのですが、この団体はスーザ・バンドではないためおそらく使っておらず、そもそも録音が古過ぎて使ってあってもわからなかったでしょう。それもあって、スーザ本人の録音とはいえ、特別なことが何かあるわけではなく、資料としては非常に貴重とはいえ、観賞用としてはちょっと人には薦めづらいものです。(2008/6/28)


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