J.マスネ 組曲第4番 「絵のような風景」

指揮アルベール・ヴォルフ
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1955年6月20・21日
カップリンググラズノフ バレエ音楽「四季」 他
発売LONDON(DECCA)
CD番号433 088-2


このCDを聴いた感想です。


 マスネの曲の中で、おそらく「タイスの瞑想曲」の次に有名(と、わたしが勝手に考えてる)な作品です。
 この曲は、メロディー自体は平明なもので、起伏も少なく、展開としても繰り返しがかなり多いのですが、オーケストレーションが華やかなためとても魅力的な音楽になっています。
 編成としてはそんなに大きなほうではないのですが(チューバも入っていませんし)、色彩豊かで可愛い曲です。
 演奏にもよるのでしょうが、フォルテでも力んだりしないで柔らかいので、メゾ・フォルテぐらいの優しさです。

 この曲の中で、最も印象深いのは第3曲(全部で4曲構成)の「アンジェラスの鐘」です。
 鐘をモチーフにしていながら鐘を使わない曲としては、ビゼーのアルルの「カリヨン」と並んで好きな曲です。
 両方ともホルンが鐘を象徴しているのは一緒なんですが、アルルの「カリヨン」が躍動的なのに対して、こちらの「アンジェラスの鐘」はもっと重々しく静的です。
 アルルの「カリヨン」が街中の教会なら、「アンジェラスの鐘」はさながら森の中の湖畔に立つ静かな教会といった感じです。(実際にはどういうイメージで作曲されたかはわかりませんよ!)
 また「絵のような風景」の中でも、これ以外の3曲は、多少明るめ暗めの差はあっても、基本的には躍動的でにぎやかで楽しげなのに対して、この曲だけは異彩を放っています。
 さきほど、フォルテでも力まないで柔らかいと書きましたが、この曲だけは例外です。フォルテは迫力があり、厳粛にして美しく、情緒が溢れています。

 指揮者のヴォルフは、ほとんど忘れられた過去の指揮者といっても、あながち間違いでもないでしょう。
 あらえびすさんの著書「名曲決定版」(中央公論社)ではフランス系の指揮者としては2番目に解説されていることから考えると(ちなみに一人目はゴーベール)、当時(昭和13年頃)はそれなりに名が知られた指揮者だったとは思うのですが、現在その名が語られることは滅多にありません(というか一回も見たこと無いです)。
 いつ頃生まれて、いつ死んだのかさえ全く分かりません。
 ヴォルフに限らず、フランス系の昔の指揮者って、どうも不遇のような気がします。
 ゴーベールにしろ、コッポラにしろ、同世代のドイツ系指揮者の演奏がバンバン復刻されているのに、全然復刻されません(コッポラは近年DUTTONで一部復刻されましたが)。

 録音は、さすがDECCAと言うしかありません!
 ステレオ初期にも係らず、雑音は全く無く、細部のニュアンスまではっきりわかり、さらに音の拡がりもとても自然です。
 というか、ハッキリ言って、「これ本当に1955年の録音か?」と疑いたくなるくらい凄い録音です。
 ……ああっ、なんでこの録音技術をベイヌムに対して発揮してくれなかったのか!
 そう嘆きたくなります。(2000/9/22)


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