J.G.アルブレヒツベルガー 口琴、マンドラと管弦楽のための協奏曲 ホ長調、ヘ長調

指揮ハンス・シュタットルマイア
独奏口琴:フリッツ・マイア
マンドラ:ディーター・キルッシュ
演奏ミュンヘン室内管弦楽団
録音1984年7月29〜31日
発売ORFEO
CD番号C 035 821 A


このCDを聴いた感想です。


「口琴(こうきん)」という楽器をご存知でしょうか?
 金属や竹を栓抜きのような形に曲げたものを、口の中や横につけ、口の中で響かせて音を出す楽器なのだそうです。詳しくはこちらを→Wikipedia:口琴
 この楽器が出す音というのがまた特殊で、「びよ〜ん」とか「ぼ〜ん」といった、柔らかく重いものが跳ねるような、ほとんど効果音みたいな音色です。「口琴」という言葉は聞いたことが無くても、音を聴けば、どこかで一度くらいは耳にしたことがあると思います。……おそらく効果音としてだと思いますが。
 楽器としてはかなり原始的な部類に入るようで、楽器本体には音程を変える機能は無いのだそうです。では、どうやってメロディーとかを弾かせているかというと、倍音を利用して、口の中を大きくしたり小さくしたりとか舌の位置を動かして音を変えているのです。なんだか無弁のナチュラル・ホルンみたいな話で、よくまあメロディーになるものだと思いますが、CDの演奏ではバロック音楽のように結構細かく動くメロディーでもちゃんと演奏しています。協奏曲ならではのカデンツァだってあるのですから大したものです。
 音の長さも自由自在で、スタッカートのような細かい音は、まるでマルカートで、ピョンピョンと跳ねながら転がっていきます。さすがにレガートのような流れる動きは難しいようですが、二つの音をつなげるスラーぐらいは、音を出しながら口の形を変えることでうまく対処しています。
 また、ダイナミクスの差もつけずらいようで、フォルテとピアノの差はあまりついていません。もっとも曲調自体が古典的で、激しいものではないので、それほど不自然ではありません。むしろ、倍音を利用して音の高さを変えているので、ナチュラル・ホルンと同様に出やすい音と出にくい音があるはずなのに、その差をほとんど感じさせず、どの音も均等に出ていることに驚きました。
 そんな口琴が独奏楽器として取り上げられている事がすでに珍しいのですが、口琴と並んで独奏楽器として登場するのが「マンドラ」です。
 マンドラは、マンドリン・オーケストラでは幅広く活躍しているものの、普通のオーケストラと組むというのは珍しいのではないでしょうか。マンドリンは、ヴィヴァルディ辺りに協奏曲がありましたが、マンドラは他に知りません。それどころか、大地の歌のマンドリンのようにオーケストラの一部として使われた例も一度も見かけたことがありません。
 そんな特殊な楽器を2種類も独奏として用いる協奏曲を作曲してしまったという奇特な作曲家の名前は、アルブレヒツベルガーといいます。
 正直言って、名前は全く聞いた事がありませんでした。いつ頃の人かも全く知らず、曲調から考えて、バロックから古典派の頃の作曲家かな、と漠然と想像していたぐらいです。
 ところが、いざアルブレヒツベルガーという人を調べて驚きました。
 あのベートーヴェンの先生の一人だったんですね。
 もちろん作曲家としても活躍していますが、後世では理論家・教育家として評価が高いそうです。手元の音楽辞典にもちゃんと項目が立てられていました。
 時代的には前期古典派で、曲もそういう雰囲気です。今回は、口琴とマンドラと管弦楽のための協奏曲として、ホ長調とヘ長調の2曲を一度に取り上げていますが、どちらも雰囲気に大きな違いはありません。一応、ホ長調は全3楽章で、ヘ長調はメヌエットが加わった全4楽章という違いはあるものの、ほぼ同列で、曲の長さもどちらも全曲で20分前後とほぼ同じです。雰囲気は、両曲とも優雅で、マンドラの響きがまた、いかにも宮廷などで演奏されていそうな上品なものです。
 ところが、ただ一つ異色なのが口琴です。
 ビヨンビヨンという響きは上品とはほど遠く、宮廷に無理やり下町が割り込んできたみたいに、妙に斬新です。
 ほとんどミスマッチと言って良い位なのですが、逆に言えば、それがなければ、他の作曲家のマンドリン協奏曲辺りの大差なかったわけですから、インパクトの強さは相当です。
 最近聴いた曲の中でも、これほど印象に残った曲は他にはなかなかありませんでした。(2010/12/25)


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