J.F.ペーター シンフォニア ト長調

指揮ハワード・ハンソン
演奏イーストマン=ロチェスター管弦楽団
録音1957年5月5日
カップリングチャドウィック シンフォニック・スケッチズ 他
発売マーキュリー・ミュージックエンタテインメント(Mercury)
CD番号PHCP-10332(434 337-2)


このCDを聴いた感想です。


 このCDは、アメリカの作曲家の作品をハンソンがイーストマン=ロチェスター管を指揮したもので、マーキュリーでも定番のシリーズの一つです。
 アメリカは、バーンスタインが初めてのアメリカ出身の本格的な指揮者と形容されることもあるぐらい、音楽の発展はヨーロッパに較べてかなり遅れていました。当然、アメリカの作曲家の歴史も新しく、古くても19世紀中頃以降の活躍で、亡くなる頃にはすでに20世紀に入っていましたという人がほとんどです。
 いきおい作品の傾向も、機能的だったりとモダンなものが多く、ロマン的な香りの強いものがあれば、これはアメリカではかなり初期の作曲家のものだと類推できるほどです。
 こういった現代的な作品が並ぶなか、異彩を放っているのがこの「シンフォニア」です。
「シンフォニア」というとJ.C.バッハも同名の曲を書いていますが、傾向も正に同じです。ハイドンの交響曲の規模を小さくしたものという雰囲気で、完全に古典派の曲です。ドラマチックなところが無く、整った様式の美しさで聴かせています。
 他の作曲家の曲と較べると、現代劇と時代劇が並んでいるようで、まるで150年ほどタイムスリップした気分になってきます。
 作曲したJ.F.ペーターという人物は全く聞いた事がなかったのですが、アメリカの作曲家なら古くても19世紀の人のはずだから、ロマン派全盛の時代に妙にアナクロな曲を書くなあ、とか、あるいは逆にもっと新しい20世紀の人で、プロコフィエフの「古典」みたいに、わざわざハイドン時代の様式をまねて書いてみたのかな、などといろいろ推測していました。
 運良く、このCDには日本語解説がついていて、それにJ.F.ペーターについて書いてありました。
 それを、読んで一度に疑問が解けました。
 ヨハン・フリードリッヒ・ペーター(1746〜1813)。なんのことはない、そもそもハイドンとほとんど変わらない時代の人だったのです。時代錯誤どころか作曲者にとっては当時の流行の様式で書いていたに過ぎません。
 そもそもはオランダ出身で、14歳の時に、フィラデルフィア近郊に移住してきたようです。オランダ出身といっても、音楽教育自体はフィラデルフィアに移ってから受けており、ほぼアメリカが生んだ作曲家といって良いでしょう。まさにガーシュインやアイヴズなどに先立つアメリカ出身作曲家の走りですね。
 曲の「シンフォニア」は、上記の通り、古典派の典型そのもので、編成も管楽器無しの弦楽合奏とこじんまりとしたものです。
 ただ、この編成は実はペーターの書いたものとは少し異なり、本当は各パートの一人ずつの弦楽五重奏曲(弦楽四重奏+ヴィオラをもう1パート)なのだそうです。それをこの演奏では、パートの人数を増やして弦楽合奏にしています。
 オリジナルの編成を聞いたことが無いので想像による比較ですが、合奏になっても全く違和感はありません。むしろ響きに厚みが出てきて、力強さと華やかさが現れています。
 曲の構成は4楽章で、基本的に緩徐楽章がありません。通常なら緩徐楽章であるはずの第2楽章はポロネーズになっています。ポロネーズといっても激しかったり力強いものではなく、明るく牧歌的でゆったりと足を踏みしめていくような雰囲気で、たしかに他の楽章に較べれば遅いテンポですが、それでもアレグレット程度です。
 第3楽章のメヌエットは、ヴィヴァーチェという指定があるくらいですから、テンポも速めで、テンポ良く進んでいきます。トリオでは短調になりますがそれほど暗くは無く、明るい曲です。
 第1楽章は、テンポ指定はプレストとなっていますが、テンポ自体はそれほど速いわけではありません。軽快ではありますが、テンポは最も遅い第2楽章ともそれほど変わらないくらいです。呈示部に繰返しがあることもあって、全体で18分強の演奏時間の中で、この楽章だけで8分以上かかっています。伴奏に分散和音での細かい動きが常に繰り返される躍動感のある曲です。
 第4楽章も第1楽章と同様テンポ指定はプレストで、こちらはプレストらしくない第1楽章とは異なり、プレストらしいスピード感のある曲です。第1楽章の伴奏が分散をなぞる細かい動きを繰り返すのに対して、こちらは同じ音をくりかえす刻みが多く用いられています。これが程好い緊張感をもたらし、なかなか高揚感のある華やかな曲調になっています。
 ハイドン辺りの古典派が好きで近現代に見向きもしない人がいたら、アメリカの作曲家の書いた曲にもこんなのがあるんだよ、と教えたくなるような曲です。(2008/1/12)


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