J.C.バッハ シンフォニア 第2番 変ロ長調 op18/2

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1929年1月16日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CD 9474)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクはこの曲を1926年にコンセルトヘボウ管と録音しています。この演奏は、その録音から約3年後、オーケストラもニューヨーク・フィル響に変わっての再録音となります。
 その時の感想にも書きましたが、コンセルトヘボウ管との演奏とは少なからぬ違いがあります。
 第1楽章では、コンセルトヘボウ管との演奏が激しく直線的でいわば骨中心の音楽だったのに対して、ニューヨーク・フィル響との方は、響きも厚く丸みを帯び、ふくらみを感じさせる表現になっています。前回の感想では『ロマンティック』と書きましたが、むしろ『穏健』といった方が近い雰囲気です。
 第2楽章も、テンポをいろいろ動かして表情濃く歌うコンセルトヘボウ管に比べて、表現は抑え気味です。あまり細部までゴチャゴチャといじったりせず、むしろ横の流れを重視して大きく歌わせています。
 全体としても、コンセルトヘボウ管の方が細部の表現に力が入っていて、作品を間近で見た臨場感のある演奏なのに対して、全体を少しは離れたところから構造を中心に俯瞰的に見た演奏になっています。だいぶモダンな印象を受けますね。
 もっとも、モダンといっても例えば1950年代後半のヴァン・ベイヌムの演奏と比べたら、スッキリ具合では天地の差があります。あくまでもメンゲルベルクの演奏としてはの話です。
 メンゲルベルクの二つの演奏の違いは、3年という年月の差よりも、オーケストラの違いの方が大きいのかもしれません。
 コンセルトヘボウ管の音は、しっとりというかベタベタと言いたくなるぐらい湿潤系ですが、ニューヨーク・フィル響は、かなりパリッとした乾いた音なのです。同じように短い音を演奏していても、コンセルトヘボウ管の場合は、重く力強く聞こえ、ニューヨーク・フィル響では、軽くキレがありスマートに聞こえます。
 録音の方でも、場所と年月の差が意外と大きく出ています。たしかにコンセルトヘボウ管との録音も時代を考えればそう悪いものではありません。しかしニューヨーク・フィル響との方が細かい動きまでより鮮明になり、なにより響きがよく録音に入っているため全体がまとまっています。ほとんど楽器の音が個々別々に聞こえてきたコンセルトヘボウ管とは大きな違いです。
 さらに、コンセルトヘボウ管と最も大きく異なるのは、第3楽章が録音されていることです。本来ならこの点を真っ先に挙げるべきでしたが、内容が比較できないのでつい後回しにしてしまいました。
 テンポ指定はプレストですが、そう躍起になって飛ばしたりはしません。かといって完全に落ち着いてしまうのではなく、快速なテンポを適度に保って進んでいきます。
 ただ、軽快というほどには横の流れが滑らかではありません。スラーとスタッカートの差をはっきりと出していて、むしろ折り目正しいという印象を受けます。

 前回は気がつかなかったのですが、今回、総譜を見ながら聞いて初めて気がついた点がありました。
 第2楽章に、何箇所かカットがあります。
 冒頭のメロディーを最初は弦とオーボエで、次にフルート・クラリネット・ホルンで演奏するパターンが3回(冒頭・中間・終盤)ほど登場しますが、フルート・クラリネット・ホルンの部分が、最初の一回以外、つまり二回目と三回目ではカットされいます。おそらくほとんど同じメロディーの繰り返しなのでカットしたのでしょうね。これはどちらの演奏とも共通しています。
 また、第3楽章では、カットではありませんが、楽譜上は繰り返しの指定が無いところまで繰り返しています。
 わたしの手元にある総譜(オイレンブルグ社)では、繰り返しは冒頭から第16小節目までしか指定がありませんが(楽章は全体で136小節ある)、メンゲルベルクは途中途中で繰り返しながら、ほぼ全体を2回分演奏しています。
 メンゲルベルクは、繰り返しをやらないことは多くても、指定に無い繰り返しをすることは他では見たことがありません。ちょっと珍しいのではないかと思います。(2005/12/3)


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