J.C.バッハ シンフォニア 第2番 変ロ長調 op18/2 〜第1・2楽章〜

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1927年6月10日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CDS 9018)


このCDを聴いた感想です。


 この演奏は、メンゲルベルクの特徴の二つの面がちょうど対照的に表れています。
 この曲は、本来なら全3楽章ですが、演奏は前半の第1・2楽章しか収録されていません。この二つの楽章が、メンゲルベルクの演奏における二つの傾向のそれぞれ典型的な演奏なのです。
 曲自体の形式は、シンフォニアのごく一般的な形で、第1楽章がアレグロの速い楽章で、第2楽章がアンダンテのゆったりとした楽章。そして、この演奏には含まれていませんが、第3楽章がプレストの3拍子系の速い楽章となっています。
 その速い第1楽章を演奏する時のメンゲルベルクは、鋭いリズムとスピード感溢れるテンポを兼ね備えた、即物的な傾向の強いメンゲルベルクです。
 音楽の造型をキッチリと保ち、高層ビルのように堅固な音楽を造り上げていきます。
 テンポもほとんど動かさず、一定のテンポを保ち、そのまま畳み掛けるように音楽をグイグイ引っ張って行き、音も短く切って、キレがあります。
 途中で、レガートやスラーのメロディが出て来ても、メロディよりもスピード感の方に重点がおかれ、メロディは、短く刻まれているリズミックな伴奏に乗っかるような形で、あくまでもさりげなく上品に歌われています。
 この傾向は、一年半後のニューヨーク・フィル響とのもう一つの録音では、かなり薄まってしまい、ロマンティックな傾向に近づいてしまっているため、このコンセルトヘボウ管の方がより直線的な演奏です。

 反対に、第2楽章のメンゲルベルクは、絶え間無く揺れ動くテンポと、極限まで歌い込まれたメロディという、ロマンティックな傾向の強いメンゲルベルクです。
 大抵の方にとっては、メンゲルベルクというと、おそらくこちらの印象の方が強いのではないでしょうか。
 第2楽章でのメンゲルベルクは、正しく予想に違わぬ演奏を聞かせてくれます。
 冒頭からして、そのゆったりとしたテンポ以上に、メロディの歌い込みっぷりに驚かされます。
 まるでチャイコフスキーの交響曲の第2楽章のように、ビブラートをたっぷりと効かせ、強弱のダイナミクスの幅も大きく取り、濃厚に表情を付けています。
 その様子は、まるで寄せては引いていく大きな波のようで、音楽にうねりが感じられます。
 これがさらに、途中からオーボエが延々とソロを演奏する辺りからは、テンポがより一層激しく伸び縮みし始めます。
 オーボエのソロなんて、ほとんど協奏曲のカデンツァのようで、メロディの流れに沿って、上に上がる時には、どんどん加速していって一気に駆け上ったり、頂点から下に降りようとする瞬間には、名残を惜しむかのように、音楽が止まってしまったかと思うほど、テンポがゆっくり粘っています。
 一定のテンポという言葉とは無縁の演奏で、第1楽章が直線的な規格で構成された高層ビルとすると、この第2楽章は、差し詰め自然の木をそのまま利用した草庵といった雰囲気があります。
 おそらくクリスチャン・バッハの時代の様式からは大きく外れた演奏なのでしょうが、こういう演奏も異なった楽しさがあります。

 最初にも少し書きましたが、この曲は本来全3楽章なのですが、この演奏は第1・2楽章のみで、第3楽章が録音されていません。
 おそらく、メタル原盤への収録時間の都合でしょう。第3楽章まで録音すると、3面分使ってしまうため、SP一枚の裏表で済む2面分の録音に止めておいたのだと思います。(2003/3/1)


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