J.ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

指揮ヴィクトル・デ・サーバタ
独奏ヴァイオリン:ナタン・ミルシテイン
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1950年3月16日
カップリングベートーヴェン 交響曲第5番
発売TAHRA
CD番号TAH 449


このCDを聴いた感想です。


 ミルシテインがかなり自由奔放に歌っています。
 とにかく思いっきり感情と込めて歌い、そのためにはテンポの伸び縮みなどは当たり前。至るところで速くなったり遅くなったり、おまけにテンポを変えるにしてもきれいにカーブを描くように滑らかに変えることなどほとんどなく、急発進や急ブレーキなどあちこちで出てきます。そのため伴奏のオーケストラとずれてしまうこともあるのですが、ミルシテインのテンポの急変ぶりを考えると、デ・サーバタとニューヨーク・フィル響は、むしろピッタリ合わせている方ではないでしょうか。
 それだけ自由に歌っているだけあって、ソロ・ヴァイオリンは非常に生き生きとしています。
 特に第2楽章などのように長いメロディーをゆったりと歌わせるところでは、一音一音までしっかりと感情を込めて弾いています。さらにところどころにポルタメントまで入れているのですから、表情はコッテリと濃く、まるでドロッとしたポタージュスープを食べているみたいなもので、それだけでも腹いっぱいになるぐらいに、食べ応え……いや、聞き応えというべきでしょうか、本当に十分に聞き切ったと思わせてくれるような演奏です。
 一方、速いテンポの部分は、表情の濃い力強い音ながら、かなりキレがあります。
 アタックを硬くつけて、後ろも短くスパッと切っていますが、決して荒っぽくはなっていません。
 剃刀のような細く鋭い音ではありませんし、鉈のように力で叩ききるのでもありません。
 出刃包丁のように、鋭い刃は持ちながらも、太い骨でも力でザックリと切っていく。キレと力を兼ね備えているのです。
 これでテンポを速くしたり遅くしたりとやりたい放題やっているのですから、これはもう当たるを幸いバッタバッタとなぎ倒していっているのに近いものがあります。
 そもそも、音色自体、透明感のある音ではなく、もちろん汚い濁った音ではありませんが、ベターっと色を塗ったような自己主張の強い音です。
 音色から濃いところへ、歌い方もそれに輪をかけて濃いのですが、意外としつこさは感じません。
 おそらく歌い込んでも、必要以上にテンポを後ろに引っ張ったりせず、常に前へと進む流れを保っているためではないかと思います。
 伴奏のデ・サーバタとニューヨーク・フィル響も、ソロほどではないにしても良く歌っています。
 特に第1楽章の第2主題の長く音を伸ばすメロディーなどは非常に伸びがあり、ソロと違って一定のテンポを保っているため、折り目正しく、奔放なソロと良い対照になっています。
 速いテンポの部分は、こちらも大編成ながらキレが良く、ソロによってあちこちへ彷徨ってしまいかねない音楽を本道に戻し、音楽をきちっと引き締めています。
 ソロとオーケストラの歌い方の点で上手くバランスの取れた演奏という印象を受けました。(2006/2/11)


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