J.ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

指揮ハンス・シュミット=イッセルシュテット
独奏ヴァイオリン:ジネット・ヌヴー
演奏北西ドイツ放送交響楽団
録音1948年5月3日
発売Stil
CD番号0305 SAN 48


このCDを聴いた感想です。


 オイストラフをコンクールで上回るほどの実力の持ち主で夭折のヴァイオリニスト、ジネット・ヌヴー。彼女のブラームスのヴァイオリン協奏曲として、あまりにも有名な演奏です。
 こういう、いわゆる『名盤』と称される演奏は、わたしの趣味が偏っている事もあって、聴いても今一つ良さが分からない場合も少なくないのですが、この演奏は、なるほど、名盤と言われるのも納得できました。
 オーケストラとソロの双方とも良いのですが、やはり、より強く印象付けられたのは、ヌヴーのソロです。
 もう、最初の登場する場面から圧倒されました。
 低音の短い伸ばしから、二回の5連符を経て、一気に2オクターブ以上も駈け上がるというメロディーなのですが、その音の太さといい、勢いといい、圧倒的な輝きを放っていました。
 なにしろ、このブラームスのヴァイオリン協奏曲という曲は、ブラームスらしく(笑)曲が始まってからソロが登場するまでが結構長いのですが、その長い前振りも、ソロが登場した途端に一気に記憶から吹き飛んでしまったぐらいです。
 ヌヴーを他のヴァイオリニストと較べると、たしかにテクニックという点では、ヌヴーと同等か、もしくはそれ以上のヴァイオリニストがいてもおかしくはありません。おそらく、ハイフェッツ辺りは、テクニックではヌヴーよりも上ではないでしょうか。
 しかし、音の太さや燃えるような生命力を感じさせるという点では、ヌヴーに比肩し得るヴァイオリニストは、わたしが今まで聴いた事がありません。
 特に、高音でも全く音が痩せないのは驚きで、録音も、既に戦後とはいえ、まだ三年しか経っておらず、その上ライブという条件を考えれば、かなり音を拾いきれていない筈ですから、そんな悪い条件にかかわらずこれだけ聞こえるということは、もし最新の録音だったらどんなに凄い状況になったか、考えるだけでドキドキしてきます(笑)
 メロディーの歌わせ方は、アタックを硬めに入れたより直線的な歌わせ方なのですが、前に進むエネルギーが非常に強く感じられます。
 しかもライブであるため、どんどん畳み掛けてくるような雰囲気があり、生命力溢れる勢いがあります。
 この雰囲気は、ゆったりとした第2楽章でも変らず、緩やかなメロディーだからといって、急に掌を返したように柔らかい歌わせ方になったりはしません。
 基本は、太くて力強い直線的な歌わせ方を保っています。
 ただ、いくら直線的だからといって、あっさりと流している訳ではなく、前に進む力の強かった速いメロディーとは逆に、一つ一つの音にじっくりと時間をかけて歌わせているため、大河のような堂々かつ毅然とした雰囲気を生みだしています。

 一方、バックのオーケストラの方も堂々としています。
 この北西ドイツ放送響(現、北ドイツ放送響)は、設立されてからまだ四年目ですが、イッセルシュテットが心血を注いだだけあって、既にかなり高いレベルに達しています。
 単に機能性が高いだけでなく、ニュアンスがよく統一されていて、しかもメロディーがよく歌われています。
 そのため、ヌヴーをソリストに迎えても、ちゃんと対等に張り合え、ヌヴーの個性に押されて単なる背景になってしまう事無く、ヌヴーをバックとして支えつつ、出るべきところではちゃんと自己主張できているのです。
 特にこの曲は、他のヴァイオリン協奏曲に較べてオーケストラの重要性が高く、いくらソリストが良くても、オーケストラが低調だと魅力が半減するのですから、この北西ドイツ放送響の充実した演奏は嬉しいところです。

 録音については、さきほど条件は劣悪と書きましたが、その条件での録音としてはかなり良い部類に入ると思います。
 これはリマスタリングによる効果もあるかと思いますが、雑音がほとんどなく、しかも音が鮮明です。
 当時の他のライブ録音が、雑音だらけで遥かに貧相な音のものがほとんどなのに較べると、とても同じ時代の録音とは思えないほどです(笑)(2002/12/13)


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