J.ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調

指揮アルトゥール・ロジンスキー
独奏ヴァイオリン:ブロニスラフ・フーベルマン
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1944年1月23日
カップリングシューベルト 幻想曲ハ短調
発売キング
CD番号KICC 2189


このCDを聴いた感想です。


 ここまでソリストとバックのオーケストラの性格の違いが出ている演奏というのも珍しいかもしれません。

 ソリストのフーベルマンは、濃厚にメロディーを歌い上げることで有名ですが、この演奏でも、期待に違わずポルタメントとビブラートを駆使して、メロディーを思いっきり歌いこんでいます。
 一方、バックのロジンスキーは、直線的に真っ直ぐ音楽を進めていくのが持ち味です。この演奏でも、当然余計な色気を出さずに素っ気無いと思われるほどスッキリとした音楽にしています。

 もう、まるで正反対です。

 これだけ性格が違えば、ソリストとバックのオーケストラの音楽が全く噛み合わず水と油のような演奏になるかといえば、意外とそうではありません。
 性格がこれだけ違うにもかかわらず、音楽に破綻は無く、ちゃんとマッチして聴こえるのです。
 では、なぜちゃんとマッチして聴こえるかというと、実はソリストとバックには、性格の違いを乗り越えられるだけの大きな共通点があるからなのです。
 その大きな共通点とは、『音のキレ』です。
 フーベルマンもロジンスキーも、濃厚とスッキリという違いはあるものの、音のスピードが速く、アクセントを硬く決めているという点では、完全に一致しています。
 そのため、全体としては、ちゃんと統一感があるのです。

 このキレの良さが一番感じられるのが第3楽章です。
 音を短く短く切り、その短い音に力があるために、一つ一つの音に凄まじいスピード感が感じられます。
 その上、硬いアタックをバシバシと決めていくため、叩きつけるような衝撃があり、大いに迫力を生み出しています。
 実は、テンポ自体はそれほど速いというほどでもないのですが、音のキレが良いために、まるで駆け抜けてゆくようなテンポの良さがあります。

 フーベルマンの濃厚な歌自体は、第1・2楽章の方がより前面に出ています。
 特に第2楽章は、ポルタメントに加えて、テンポも歌にあわせて大きく動かしています。
 しかも、この部分だけは、ロジンスキーもフーベルマンに合わせて、テンポを動かすだけでなく、メロディーにも多少粘りがあり、ロジンスキーにしては珍しくベタッとした歌わせ方をしています。
 雰囲気としては、かなりメンゲルベルクの演奏に近いのですが、さすがにメンゲルベルクほど極端ではありませんでした。

 この第2楽章は、冒頭に世界のオーボエ奏者垂涎の長々としたオーボエのソロがあることでも有名なのですが、この演奏のソロは素晴らしい出来栄えです。
 音が良いのはもちろんなのですが、それ以上に歌い方に惹かれます。
 適度なビブラートとほんの僅かにダイナミクスを上げ下げするだけで、メロディーに豊かな表情が生まれ、このソロを心に残るものにしています。

 さて、録音の方ですが、大戦末期のライブなのですが、戦争の影響を受け難いアメリカ本土だけあって、この時代の録音としては非常に鮮明な方だと思います。
 さすがにバックのオーケストラは、幾分埋没してゴチャゴチャになってしまう部分もそれなりにあるのですが、ソロに関しては雑音も無く、大変聴き易い演奏です。
 ただ、演奏とは直接関係無いのですが、第1楽章だろうが第2楽章だろうが楽章が終わる毎に毎回拍手が入るところが、いかにも『アメリカだな』という雰囲気がして、なんだか嬉しくなってきます。(2001/12/28)


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