J.ブラームス 悲劇的序曲

指揮トーマス・ビーチャム
演奏ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
録音1937年3月22日
カップリングモーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」序曲 他
「BEECHAM conducts FAVOURITE OVERTURES Volume 2」の一部
発売DUTTON(Columbia)
CD番号CDLX 7009


このCDを聴いた感想です。


 Wikipediaなどによると、ビーチャムはブラームスのことを、バッハとベートーヴェンと並んで「3大退屈男」の一人として、その作品を揶揄したことがあるそうです。しかし、そう言っている割には、録音はそこそこ残っており、しかも、この演奏もそうですが、けっこう楽しく演奏しています。
 特にリズム感が冴えています。
 少し速めのテンポでスピードを保ち、音をスパッと切って躍動感があります。
 当時のロンドン・フィルですから、オーケストラはまだまだ非力です。たしかに、設立された1932年からまだ5年しか経っていない割には、健闘している方だとは思いますが、アンサンブルが揃わない部分が多少あります。また、録音が古いこともあり、重みはだいぶ不足しています。それでも、演奏はその難点をかなりカバーしています。
 リズムに躍動感を持たせて音楽に動きをつけると同時に、付点音符などのタッタタッタといったリズムの短い音符をしっかりと揃えることで、動きがだらしなく流れてしまうことを防ぎ、雰囲気をきっちり引き締めています。
 ポイントをちゃんと押えているため、少々アンサンブルが乱れる部分があっても、全体としてはカチッと整って聞こえるのです。
 その一方で、スピードとキレで音楽を前に進めることで、響きに重みが無いことを、逆にテンポの良さにつなげています。たしかに、ブラームスらしい厚みのあるどっしりとした重い響きを求められると、物足りなくなると思いますが、そういうものを求めるのであれば、ドイツの指揮者やドイツのオーケストラの演奏を聴いた方が手っ取り早いでしょう。
 メロディーの歌わせ方は、どちらかというとキレ重視ですから、感情を目いっぱい内に込めたような濃厚な歌わせ方ではなく、強弱の差により盛り上げて行く、大きく外に広がる歌わせ方です。スケールの大きさはそれほどではないものの、開放感があるため、雨上がりの天気のようにスキッと晴れやかな気持ちになってきます。
 ただ、部分的には力を入れて歌っている部分もあります。第106小節から始まる、ゆったりと沈んだ雰囲気からやおら立ち上がってくるヴァイオリンの動きのあるメロディーなどは、ポルタメントまで入れて濃密に歌いこんでいます。全体を俯瞰で見ていたのにここだけズームアップしたかのように他と歌い方が明らかに別物で、かなりの印象的です。いかにビーチャムがこの部分を重視していたのかが伝わって来ました。(2009/11/15)


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