J.ブラームス 悲劇的序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1942年4月17日
発売及び
CD番号
HISTORY(205254-303)
TELDEC(243 722-2)
TAHRA(TAH 274/275)
NAXOS(8.110164)
CANTUS(CACD5.00148)
ARCHIPEL(ARPCD 0193)


このCDを聴いた感想です。


 1942年の録音ですから、メンゲルベルクの演奏の中では最後期の一つにあたります。
 表現の方も細部への拘りが著しく、ますます思い切った(別名:極端な)傾向が強く表れている頃です。
 まあ『思い切った』と一括りにしていますが、作曲家や曲によってその表れ方には違いがあり、例えばチャイコフスキー辺りでは、感情を強く出した曲線的な表現が目に付きます。
 では、この悲劇的序曲ではどうかというと、何よりも最も目立つのがリズムの強調です。
 特に、付点四分音符+八分音符という『ターンタ』のリズムでの後ろの八分音符が異常なほど強いアクセントがついている点です。
 実際には伸ばした音の後の短い音符というより、次の小節の音とセットになっていて、長い音の直前の引っ掛けとなる短い音という扱いですが、小節の頭にあたる長い音よりもよほど力が入っています。
 ガソリンエンジンの圧縮と爆発みたいなもので、引っ掛けの短い音符で一気に圧縮し、ギラギラと濃いエネルギーが小節の頭で解放される、そういう繰り返しに聞こえるのです。
 テンポ自体はそれほど頻繁に動かしたりせず、わりと一定に保たれて直線的なのですが、圧縮と解放の山と谷があまりにも激しすぎて、短い音で一瞬ストップモーションになったみたいに時が止まり、次の長い音で気がついたように時間が動き出すように感じられ、テンポよく進んでいるという印象は受けません。スッと流れてしまうのではなく山場が次々と訪れるようなもので、目が眩むほどの緊張と緩和の連続です。
 音も短めに切った叩きつけるような激しいものですが、乱れはなく、勢いがあるにもかかわらず肩肘張った折り目正しさも同時にあり、その輝かしさと鋼のような硬さから非常に毅然とした印象も受けます。
 その一方で、冒頭の激しい数小節を過ぎた部分から急にテンポを落としてじっくり進める辺り、チャイコフスキーなどの曲線的な表現と共通している部分もあります。極端で芝居がかっているといえばそうなのですが、静かで抑えた雰囲気を追求するためというのは伝わってきますし、ここまで確信を持って堂々とやられると、むしろ清々しいくらいです。(2005/9/24)


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