J.ブラームス 交響曲第4番 ホ短調

指揮ヴィクトル・デ・サーバタ
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1939年3・4月
カップリングR.シュトラウス 交響詩「死と変容」
発売Polydor(Grammophon)
CD番号423 715-2


このCDを聴いた感想です。


 このCDで一番驚いたのが、音の良さです。
 この当時の録音というと、たとえスタジオ録音であっても、音はカサカサと乾燥していて貧しく、おまけに雑音だらけの場合も少なくないのですが、この録音は、人工的に残響を加えているのでしょうか(感覚的には、擬似ステレオのブライトクランクに近い印象を受けましたので)、響きが豊かで音が瑞々しく、しかも響きが多いからといって細部がぼやけることなく、個々の楽器までしっかりと聴き取ることができるという、非常に聴き易い録音です。
 たしかに、よく聴いてみると古さがわかるのですが、初めて聴いた瞬間は、正直言って1930年代の録音とはとても思えませんで、一瞬、「あれっ? この演奏って、戦後の録音だったっけ?」と思ってしまったぐらいです。

 さて、演奏の方ですが、こちらも録音に負けず、なかなかモダンな演奏です。
 同じイタリア人だからでしょうか、トスカニーニの演奏に近く、テンポをあまり動かさず、一定に保ったまま音楽を進めて行きます。
 さらに、メロディーを思いっきり歌わせるところも同じで、ビブラートや強弱の変化を大きくつけ、情緒タップリでうねるように歌われています。
 その一方で、トスカニーニと大きく違う点は、トスカニーニが速いテンポで鋭く演奏させるのに対して、デ・サーバタの演奏は、一定のテンポを保ってはいるものの、基本的に遅めで、鋭さよりも分厚さが感じられます。
 例えば、フォルテでも、硬いものを叩きつけるようなアタックではなく、柔らかく巨大なものをムギュっと押し付けるような厚みのあるフォルテです。
 もちろん、分厚いからといって、スタッカートが長くなったりというように横幅まで広いわけではなく、スタッカートはスタッカートで短くキレ良く演奏されていて、縦の厚みだけが厚いのです。
 このように、音は厚みのある音で、テンポは遅く、その上メロディーもじっくりと歌いこまれているのですが、案外、もたれるほど重くは感じられません。
 やはり、テンポが一定で、スタッカートも短くまとめてあるため、音楽が停滞することなく、どんどん前に進んでいる印象を受けるからでしょう。
 そのため、テンポ良く進んでいながら、メロディーは情緒豊かで、さらに響きも厚いという、稀有な演奏になっています。
 あっ、でも、テンポは一定と書きましたが、第1楽章の最後なんかは、フルトヴェングラー……までは行かないにしても、フルトヴェングラー張りに、どんどんテンポアップして行き、緊張感を高めています。
 それまでが一定のテンポだっただけに、その効果は大きく、音楽は一気に白熱し、畳み掛けるような勢いを生み出しています。


 ところで、演奏とは関係無い……というか、全くの余談ですが、このCDのジャケットには、デ・サーバタの写真が使われています。(このCDは10年以上前に発売されたものので、現在では異なるジャケットかもしれません)
 で、この写真が、なんというか異常にインパクトのある写真なんです。
 全体的に、白黒のコントラストが強すぎて顔面だけ白く浮き上がっている上に、まるでメークでもしたみたいにキツくアイシャドウが入り、眉なんかは金属製かと思えるぐらい眩しく反射しています。
 これで、表情も軽く唇の端を上げて微笑しているものですから、かえって怖く、指揮者というより、なんだかバンパイアかなにかのように見えてしまったぐらいです(※ あくまでも「わたし」の印象で、間違っても一般的な見方ではない事を強くお断りしておきます(汗))。
 このCDを買った当時、わたしはもう大学生でしたが、それでもなんだか夢にまで出てきそうなほどでした。
 それ以来、デ・サーバタというと、演奏の内容と全く関係無く、とにかく「妖しい」指揮者、というイメージ付けがされてしまい、結構長い間、他の演奏を買うのを躊躇してしまったものです(笑)(2003/4/12)


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