J.ブラームス 交響曲第4番 ホ短調

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1958年5月1〜3日
カップリングブラームス 交響曲第1番 他
ブラームス交響曲全集の一部
発売日本フォノグラム
CD番号PHCP3150〜1


このCDを聴いた感想です。


 1959年にヴァン・ベイヌムは亡くなっていますので、この曲が録音された1958年は、彼にとってほとんど最晩年といえるでしょう。
 この演奏は、突然の死によって断ち切られなければ、ヴァン・ベイヌムが目指したであろう方向を垣間見ることできます。

 ヴァン・ベイヌムは、戦前から活躍はしていましたが、本格的に録音が残されているのは、メンゲルベルクが追放されて、彼がコンセルトヘボウ管のトップに就いた第二次大戦後からです。
 40年代後半から50年代初めにかけての演奏は、メンゲルベルクとは対照的な、楽譜に忠実でカッチリテキパキと進めていく、一陣の涼風のような爽やかな演奏でした。
 前世紀(19世紀)生まれの巨匠達の多くが、火のような激しさを持っていたのに対して、ヴァン・ベイヌムはいくら激しくなっても水のような穏やかさがどこかにありました。
 メロディーを歌わせるときも、ビブラートを思いっきりかけて情感をたっぷり込めて歌わせるのではなく、流れるように自然で響きを重視した歌わせ方をしているため、熱が入って激しくなっても暑苦しさがなく、どこか涼しさを感じさせます。

 この演奏も晩年だからといって、ヴァン・ベイヌムの楽譜に忠実でスッキリした特徴が失われているわけではありません。(晩年といってもまだ57歳ですから)
 水のような涼しげな感覚はそのままですし、テキパキと進んでいく基本姿勢は1940年代後半と較べても全く変わりありません。
 しかし、それらの特徴を備えながらも、わたしには、ヴァン・ベイヌムが往年の巨匠達にだんだん近い方向に変わってきたように感じられました。
 それは、フレージングが大きくなり、それに伴いスケールが大きくなったことや、テンポに少し伸び縮みが出て来て、間の取り方も大きくなり、幾分ロマンティックな傾向に変わってきた点に現われはじめています。
 これらの特徴は、ゆとりが出てきたという面から、円熟味が増したという言い方もできると思います。
 けれども、それと同時に、少しづつではありますが、スッキリとした爽やかさが失われて行きつつあるように思えるのです。
 ただ、この方向に変わりつつあるというのは、やはりヴァン・ベイヌム自身がその方向を目指していたからではないでしょうか?
 とはいえ、この曲が録音されたほぼ一年後にヴァン・ベイヌムは急逝してしまいますので、本当にそういう意図があったのかは永遠に不明です。

 この演奏は、そんなスッキリとした特徴と、スケール大きさが無理なく結びついています。
 また、ステレオ録音ということも、大きく味方しています。
 奥行きが広くなり、スケールが大きく感じられる重要な要因となっています。
 録音自体も、時代を考えるとなかなか良い方ではないでしょうか。

 実は、わたしが初めて買ったヴァン・ベイヌムの演奏がこのCDでした。
 今から大体8年ぐらい前になるのですが、当時、既にメンゲルベルクは大好きでしたが、ヴァン・ベイヌムについては、全くと言っていいほどなにも知りませんでした。
 ただ、『メンゲルベルクが追放された後、コンセルトヘボウ管を短期間で再建した凄い指揮者』ぐらいのイメージしかなかったため、このCDが発売されたときに、「ブラームスなら少しは知ってるし、いい機会だから一丁聴いてみるか」ぐらいの気持ちで買ったのです。
 で、聴いてみてビックリしました。

「ヴァン・ベイヌムってこんな凄い演奏をする指揮者だったんだ!」

 コンセルトヘボウ管を短期間で再建したことにアッサリと納得しました(笑)

 こんなふうにわたしに衝撃を与えたこの演奏は、今でも、わたしがこれまでに聴いたブラームスの第4番の中で最も好きな演奏の一つです。(2001/7/13)


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