J.ブラームス 交響曲第3番 ヘ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1932年5月10日
発売及び
CD番号
HISTORY(205254-303)
Pearl(GEMM CDS 9018)
TAHRA(TAH 274/275)
G.S.E Claremont(CD GSE 78-50-48/49)
東芝EMI(TOCE-8191〜99)
東芝EMI(FECC 30784〜5)
NAXOS(8.110164)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクが指揮したブラームスの交響曲の録音はそれほど多くありません。第2・4番は一種類ずつ、第1番も少し前にTAHRAから発売された未発表の録音が出る前は、第3楽章だけの抜粋こそあったものの全曲としては一種類しかありませんでした。
 その中で第3番のみは、以前からスタジオ録音とライブ録音の二種類が知られていました。その録音時期も、他の3曲が第1番の抜粋を除けば、ほぼ1930年代後半から1940ぐらいまでに集中しているのに較べ、第3番は、ライブ録音はメンゲルベルクの最晩期の1944年、スタジオ録音の方は60歳を少し超えた頃の1932年と、前後5年くらいずれています。
 今回の1932年の演奏ではその5年の違いが意外と大きく感じられました。
 後の演奏では重点が置かれるようになった細部への拘りは、1932年の時点ではそれほどではなく、それよりも勢いとスピードが重視されています。メロディーの最後などでテンポを変えているところはありますが、テンポを変えたところに表現の頂点を置いて劇的な効果を出すのではなく、そこに至るまでのテンポをあまり変えずに突き進むところに力が入れられていて、テンポが動くところは間を取って余韻を残すという、つなぎのような扱いになっています。
 テンポの違いで印象的なのは、そういうメロディーの最後という部分的な点ではなく、メロディー単位でかなり違いをつけている点です。
 例えば第2楽章が一番典型的で、冒頭のクラリネット他で演奏されるのんびりとしたメロディーはテンポが遅く、じっくりゆったり演奏するんだな、と思っていたら、その後でオーボエ他で演奏される上下に細かく上がり下がりするメロディーの部分で、急にテンポが速くなります。これによりリラックスした雰囲気から一気に緊張感が高まり、勢いが出て盛り上がったところで、冒頭のメロディーが雄大に被さって大きな太い流れになります。同じ事を後の1944年の演奏でもやっていますが、この演奏の方が細かいところにこだわり過ぎない分、流れがより自然で、勢いが感じられます。
 後の1944年のライブ録音は頻繁にテンポを動かして濃厚に表情をつけていて、それはそれでメンゲルベルクらしいのですが、あまりにもドロドロとして癖が強いため聴く人を非常に選びます。それに対して、この録音は直線的のため明快でずいぶん聴きやすくなっています。さらに音のキレも良く、なによりここぞという決め所がビシッと揃っているため、堂々としています。
 録音状態は、1930年代前半としてはなかなか良いのですが、なにせ年代自体が古いので、まあまあといったところでしょう。
 ただ、1944年のライブ録音が、非常に音が悪いので、それに較べたら古いといえ、こちらの方がだいぶマシなのではないかと思います。(2005/5/28)


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