J.ブラームス 交響曲第3番 ヘ長調

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1944年2月27日
発売及び
CD番号
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.107)
Music&Arts(CD-780)
Q DISC(97016)
ARCHIPEL(ARPCD 0193)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクの最後の演奏の一つです。

 メンゲルベルクは1944年4月16日にパリ放送管とドヴォルジャークのチェロ協奏曲を演奏していますが、コンセルトヘボウ管との演奏で録音が残っているのは、この演奏が最後です。
 この演奏を聴くと、晩年のメンゲルベルクがどんな方向の音楽を目指していたか、なんだかわかるような気がします。

 メンゲルベルクはブラームスの交響曲第3番をこの演奏以前にも1932年5月にスタジオ録音しています。
 1932年と今回の1944年。演奏スタイルが完全に固まっていて、年月を隔てた演奏でもスタイルが驚くほど変わらない、とよく言われるメンゲルベルクですが、ことこのブラームス第3番に関しては、この12年は、メンゲルベルクの演奏スタイルを大きく前進させました。
 では、1932年の演奏に比べて、今回の1944年の方がいい演奏か? ……と言われますと、実は、素直に頷くことはできません。
 さきほど、演奏スタイルを大きく前進させたと書きました。これはどういう意味かというと……はやい話が、より極端になったということなんですね〜
 恣意的な演奏ここに極まれり、といった感じで、スタイル的にはより突き進んでいるんでしょうが、視聴者の方でついていけない人がどんどん増えているような気がします。
 テンポは全体的に遅くなり、さらに激しい伸び縮みをします。
 メロディー一つをとっても、自然な歌わせ方をしているものは何一つありません。
 また突然の大休止など、聴いていて呆然とさせられることもしばしばです。
 これは仮想現実の世界か、と思えるほど、自然なものは一切無く全てが人工的に感じられます。
 とても人に薦められる演奏ではありません。ましてやこの曲を初めて聴く人には、まかり間違っても聞かせられません。
 しかしっ!、メンゲルベルクが好きな人にとっては、これほどまでにメンゲルベルクの世界を堪能できる演奏はなかなかないでしょう。
 不自然なまでに歌いこまれたフレーズ!
 あって無きがごときテンポ感!
 巻きもタメも自由自在!
 でも、熱気と迫力は満点!
 もう、最高です(笑)
 個人的には、第4楽章の212小節の2拍目(第2主題が2回目に演奏された後、ヴァイオリンが2小節かけて山をつくり、全パート四分休符休みがあって、全パートが一斉にフォルティッシモで演奏する部分)で、楽譜以上に間を空けたために生まれる緊張感と、217小節のメロディー(ヴァイオリンがAs-As---GF(音名一つが八分音符。"-"は前の音の伸ばし)と弾くメロディー)に入る前の拍を、思いっきり溜めているところが、特に好きです。

 それにしても、わたしはこの演奏を聴くたびに、「こんなテンポで、よく団員はついてこれるなぁ」と感心します。
 常に変化するテンポに合わせるには、よほど指揮者の意志を団員に浸透させていないと不可能な話です。しかもライブなのですから恐れ入ります。
 ……まあ、さすがに一部破綻している部分もありますが(笑)

 ただ、この演奏、録音は劣悪です。
 大戦末期のライブ録音という悪条件なので、仕方が無いのですが、とにかく雑音が多く、非常に聴きづらいのです。
 これも人に薦めにくい一因です。
 せめて、もう少し聞きやすかったら良かったのですが……(2001/3/16)


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