J.ブラームス 交響曲第2番 ニ長調

指揮エフゲニー・ムラヴィンスキー
演奏レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
録音1978年4月29日
カップリングブラームス 交響曲第1番 他
「ブラームス交響曲全集」より
発売MEMORIA
CD番号991-006


このCDを聴いた感想です。


 とにかく歌って歌って歌いまくった演奏です。
 なによりビブラートが強烈です。
 上下の幅の広い大きなビブラートをたっぷりとかけ、メロディーは大げさなぐらい表情をつけて歌いこんでいます。
 さらに、強弱のダイナミクスの差が広く、ピアノからフォルティッシモの限界まで駆使して大きく盛り上げていきます。これをレニングラード・フィルのような合奏能力に優れたオーケストラが一体となってやるのですから効果は倍増です。
 第1楽章の初めの方で、トロンボーンとチューバのコラールに引き続いてヴァイオリンが演奏する伸びやかなメロディーがありますが、そのメロディーの途中に出てくる長い音符によく特徴が表れています。
 長い音符の頭の部分ではわずかに聞こえる程度の小さい音が、伸びるにつれて急激にクレッシェンドしていき、ビブラートもそれに合わせてどんどん大きくなっていきます。みるみるうちに伴奏をはるかに見下ろすほどの強く太い音になって強烈に存在をアピールしたかと思うと、次の音に移る少し手前で手品のように鮮やかに力を抜き消え去っていきます。
 急激なクレッシェンドと引き際の手際のよさにより、強い部分と弱い部分の差が際立ち、非常にメリハリのついた彫りの深い、というか濃い表情がついています。
 さらには、フォルテとピアノの切り替えが速いだけでなく、ここぞという部分では、粘りに粘ってメロディーを大きく歌わせています。
 じっくりと歌い込むためにはテンポを犠牲にすることすらためらっていません。
 さすがにテンポの速い第4楽章はそれほどでもないのですが、第1・2楽章、特に第1楽章はメロディーを歌わせるうちにテンポはどんどん遅くなっていきます。さらにはメロディーが盛り上がった頂点では劇的な効果をつけるためにもう一段階テンポを落とすことまでやっています。
 あまりにも頻繁にテンポを動かすため、スピード感やキレの良いテンポといったものはほとんど無く、分厚い響きでひたすら粘る、じっくりと力のこもった演奏になっています。
 ムラヴィンスキーの演奏というと、メロディーのダイナミクスの幅が広いのはイメージ通りとしても、テンポはわりとかっちり一定を保つ硬い印象があったのですが、この演奏ではメンゲルベルクやフルトヴェングラーといったまだテンポをゴチャゴチャと動かす頃の過去の指揮者を上回るほどの変幻自在のテンポで、なんだかとても意外に感じました。

 もう一つこの演奏で印象に残ったのが、ホルンです。
 正確にはこの演奏だけでなく、レニングラード・フィルの他の演奏もそうなのですが、いつ聞いても非常に独特の音色と歌い方です。
 深く下に潜るような少しこもった音色に、上下の幅の広い大きく揺れるビブラート。直線的に跳ね返って聞こえてくるのではなく、ボワッと漂うように響きます。
 このブラームスの第2番は、冒頭からメロディーを吹いていますし、なにより第2楽章では大きなソロがあるため、いつも以上にその響きを堪能することができました。
 この音色と歌い方は、ロシア系だとは思いますが、他のロシアのオーケストラのホルンともまたちょっと違い、ここまで味を感じるのはわたしはレニングラード・フィルだけです。(2006/7/29)


サイトのTopへ戻る