J.ブラームス 交響曲第1番 ハ短調

指揮ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1950年7月13日
カップリングベートーヴェン 交響曲第1番 他
発売TAHRA
CD番号FURT 1012-1013


このCDを聴いた感想です。


 実を言うと、わたしはフルトヴェングラーのブラームス第1番を愛聴しています。
 もしかしたらブラームスの第1番に最も合っているのがフルトヴェングラーで、フルトヴェングラーに最も合っているのがブラームスの第1番じゃなかろうかと思うくらいです。
 そこまでフルトヴェングラーのブラームス第1番を評価するのも、わたしが今まで聴いたフルトヴェングラーの同曲の演奏がことごとく当たりだったからなのです(まあ、たまたまかもしれませんが)
 といっても大量にあるフルトヴェングラーの第1番の演奏の全てを聴いたことがあるわけではなく、たった三つ(今回のコンセルトヘボウ管との演奏を入れれば四つ)聴いただけですが、どれも素晴らしいものでした。
 北西ドイツ放送響との1951年盤、ウィーン・フィルとの1952年盤、ベルリン・フィルとの1952年盤、どれか一つだけでも十分に同曲の代表的な演奏と呼べる満塁ホームラン級の出来なのに、それをほんの半年の間に三つも叩き出しているとは、ほとんど三打席連続満塁ホームランを打っているようなもので、高いレベルをこれだけ安定して出せるのはよほど曲と指揮者が合っているのだと思ったわけです。
 で、このコンセルトヘボウ管との演奏です。
 そもそもフルトヴェングラーがコンセルトヘボウ管を指揮した録音は非常に少なく、同じCDに収録されている、同日のベートーヴェンの交響曲第1番とレオノーレ序曲第3番(+このブラームス第1番)の3曲しかわたしは知りません。
 そんな貴重な組み合わせの上、当時のコンセルトヘボウ管はメンゲルベルク時代のカラーは失われつつあるもの、終戦直後の停滞期を脱し、ヴァン・ベイヌムによって再び世界最高水準まで引き上げられている頃で、フルトヴェングラーにとっても上記の三つの演奏とそれほど年代に違いはなく、さらにわたしが高く買っているブラームスの第1番です。
 これはもう当たり間違い無しと確信して、この演奏がTAHRAより前にMusic&Arts社(CD-289)から初めて出た時、喜び勇んで買ってきて勢い込んで聴いてみたのですが……どうも今一つでした。
 なにより録音があまり良くなかったのです。
 雑音があるのは当時のライブですからある程度は仕方ないとしても、フォルテのような強い部分で音が割れ気味になってしまうのが致命的でした。これが気になってどうしてもそこにばかり意識が行ってしまい曲に集中できなかったのです。
 その時点である程度見切りをつけてしまい、その後、TAHRAから今回のCDが出た時も、買ってはみたのですが、どうせ同じだろうと思い、あまり身を入れて聴いていませんでした。
 ところが最近改めてじっくりと聴いてみて、違いに驚きました。
 雑音の多さこそ相変わらずですが、音の割れはかなり改善されているため聴きやすく、ちゃんと聴いてみると、実はこの演奏も上記の三種類に負けないぐらいの演奏ではないかとだいぶ見直しました。

 さて、その内容の方ですが、フルトヴェングラーらしく熱気と劇的な盛り上がりのある演奏ですが、他の三種類に較べ、より横の流れが強くなっています。
 おそらくオーケストラの方もあまり慣れていない事もあって、音楽をグイグイ引っ張って盛り上げていって、ここ一発で縦を揃えてバシッと決めるという点では、今一つ上手くいっていません(もちろんフルトヴェングラーにしてはの話で、他の指揮者に較べればはるかに盛り上がっているのですが)。音のキレもそれほど鋭くなく、重量感はあるものの少し鈍い動きです。
 ただ、その代わり響きに厚みがあります。キレの鈍さを重さに生かし、太く堂々と流れていきます。
 なにより最も特徴があるのがメロディーの歌わせ方です。
 まるでメンゲルベルク時代を思い出させるような粘りを見せています。
 これだけは、勢いと力強さを兼ね備えた他の三種類と大きく違い、勢いを減らしてまで力を入れて表情濃く歌わせています。
 粘着系のドロドロした歌い方で、ポルタメントこそほとんどありませんが、メンゲルベルクの歌い方にかなり近づいています。
 正直言って、フルトヴェングラーの他の演奏からはちょっと考えられないもので、イメージとしてはかなり外れているのではないでしょうか。とはいえ、メロディーの歌わせ方以外は堂々かつ劇的で、まさしくフルトヴェングラーの音楽以外なにものでもありませんし、そのフルトヴェングラーとコンセルトヘボウ管が組み合わさるとこうなるのか、となかなか新鮮な演奏でした。
 他の三種類の演奏とは少し方向性が違いますが、別の良さがあるということで、わたしにとっては同じくらい魅力的な演奏です。(2005/6/18)


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