J.B.ルイエ オーボエ・ソナタ ハ長調

演奏オーボエ:ローター・コッホ
チェンバロ:ヴァルデマール・デーリンク
チェロ:イエルク・バウマン
録音1974年
カップリングJ.S.バッハ オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 他
バロック・オーボエ作品集
発売新星堂(BMGビクター)
CD番号SRC-31


このCDを聴いた感想です。


 わたしは割と保守的な性質なのか、初めて聴いた曲で聴いた瞬間から好きになった曲というのはほとんどありません。
 たいていの曲の第一印象は、「面白くない」とか「よくわからない」とか「聴いていると眠くなる」とかその辺りで、それを我慢して何度も聴いていくうちに聴き所がわかってきてだんだん評価が上向き、最後には大好きになるというのがパターンでした。
 例えば、ベートーヴェンの<英雄>やブルックナーの交響曲辺りも、最初は退屈で退屈でしょうがなかったのですが(長い曲ですし)、半年や一年も聴いていくうちに「あ、なんだかこの部分はいいな」と思える部分が少しずつ増えていき、途中からは二次曲線のグラフのように急速に好きになり、今ではCD屋などで聴いたことが無い演奏を見かけるとついつい手を伸ばしそうになるぐらいお気に入りになってしまいました。
 というふうに、多くの曲がそれと同じような過程で好きになる中、このルイエのソナタは、珍しく聴いた瞬間から「これはっ!」と感じました。
 ルイエなんて作曲家はその時初めて目にしましたし(だいたいバッハやヘンデルと同時代です)、そのソナタはたまたまバッハの「バイオリンとオーボエのための協奏曲」のCDを買ったら、その余白に他の3人の作曲家のソナタと一緒に入っていただけで、ほとんどいいかげんに聞いていたのですが、この曲に入ったとたん、一瞬で目が覚めました。
 この曲は9分ほどの短い曲ながら、ちゃんと四つの楽章(?)に分かれており、それぞれが「緩・明」「急・暗」「緩・暗」「急・明」という構成になっています。
 その最初の「緩・明」の部分の曲の雰囲気が特に素晴らしいのです。
 ゆったりとした割と単純なメロディーをオーボエが吹いて、それをチェンバロと通奏低音のチェロが伴奏しているだけなのですが、その場に表れている雰囲気は、柔らかい光がさしているように明るくカラッとしていて、平和で安らかな空気に満ちています。
 ヴィヴァルディの四季の「冬」の第2楽章にちょっと近い雰囲気といったところですね。
 ソロオーボエのコッホの音はドイツ風の重めの太い音なのに非常に伸び伸びと吹いていて、もう最初の出だしの伸ばしている音を聴いただけで、心がどこまでも高く舞い上がっていくような心持ちがしてくるほどです。
 さらにコッホは、楽譜に無いアドリブを随所に加えているのですが(特にリピートした2回目など)、この装飾が良い彩りを加えています。しかも他の速い楽章などではテクニックとしても目を見張るような細かい動きをしていたりもするのに、全く危なげなく自然なので、安らかな雰囲気はちゃんとそのまま保っています。
 一方、伴奏の二人も負けていません。
 チェンバロのデーリンクの音は、室内楽に相応しく小さくまとまっていながら、キラキラと弾けるような音色で可憐な雰囲気があり、単なる伴奏に留まらず、かといってソロを邪魔することせず、それでいてちゃんと独自の存在感を出しています。
 また、チェロのバウマンの音は、高音に偏り気味なソロとチェンバロを下から支えるように、太く暖かい音で包み込んできます。
 しかも、これも単なる通奏低音ではなく、わずかな動きしかないのに歌っていて、まれに登場するメロディーではソロのコッホに負けないぐらい伸び伸びと大きくゆったりと歌っています。
 三者がそれぞれ個性を存分に発揮しながら、このチェロによって見事に調和がとれています。
 わたしはこの曲はこの演奏で完全にイメージを固められてしまいましたので、今後どんなに良い演奏が出てきても、決して満足できないような気がします(笑)

 さて、作曲者のルイエなんですが、実は3人います。
 1680年生まれのジャン=バティスト・ルイエ、1685年生まれのジャンの弟のジャック・ルイエ、1688年生まれの前述の二人の従弟のジャン=バティスト・ルイエ。
 最初のジャンと3人目のジャンは見ての通り全く同じ名前なので、当時の人も区別つきづらかったらしく、活動した場所にちなんで1680年生まれの方を「ロンドンのルイエ」、1688年生まれの方を「ガンのルイエ」と呼んでいます。ついでに、この『ガン』という土地があるのはベルギーで、3人の生地でもあります。
 で、肝心のこのソナタが3人のうち誰の作曲かというと……実はわかりません。
 いや、正確にはわたしには分からなかったというべきか。
 持っているCDには、作曲者はルイエとしか書いてなく、生没年も書いてないので、誰なのか分からないのです。
 とりあえずこのサイトの扱いとしては、一番の年長者ということで「ロンドンのルイエ」で代表させておきました(笑)(2004/8/28)


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