J.ブラームス 大学祝典序曲

指揮クレメンス・クラウス
演奏ロンドン交響楽団
録音1947年10月9日
カップリングブラームス アルト・ラプソディ 他
発売DUTTON(DECCA)
CD番号CDK 1210


このCDを聴いた感想です。


 カッチリと引き締まった演奏です。
 一つ一つの音の終わりをスパッと切って歯切れ良く、キビキビと進んでいきます。
 響きも締まって密度の濃い緊張感の高い音ですが、無理に圧縮しているような窮屈なものではありません。凝縮されているにもかかわらず、音楽は意外と力強さにあふれ、曲調もあるのですが、メロディーなどはむしろ伸び伸びとしています。
 よく歌っているのですが、感情をむやみに込めてテンポを無視するぐらいドロドロに歌うのではなく、キビキビとしたテンポの良さを生かして、真っ直ぐにストレートに歌い上げます。
 こういうほど良い節度を保った歌い方というのは、クラウスの得意とするところでしょうし、大学祝典序曲の屈託の無い曲調にもよく合っています。これが悲劇的序曲のほうだったらここまで相性がピタリと合わなかったかもしれません。
 また、オーケストラの方も、機能性に定評があり、しかもドイツのオーケストラほど重厚ではなくずっと軽快なロンドン交響楽団であるというも、キビキビとして締まった響きにはうってつけのオーケストラです。
 これで録音が良かったら言うこと無いのですが、さすがに録音状態にはちょっと難があります。
 いや、1947年という、第2次大戦終結からまだ2年ちょっとしか経っていないという録音年を考えると、悪いどころかむしろ良いほうで、スタジオ録音という利点はあるにせよ、当時としてはどこに出しても恥ずかしくない立派な録音です。さすがDECCAといったところでしょうか。
 ただ、やっぱり1947年は1947年なのです。
 ステレオではなくモノラルですし、細かい動きまでは聞き取れなかったり、バランスもパーカッション(特にシンバル)が弱かったりと、さすがに後世の録音には一歩譲ります。比較せずに単独で聞いている分には十分なのですが。

 ほぼ一定のテンポを保って、キッチリと進んでいきますが、途中で一箇所だけ明らかにテンポを変えている部分があります。
 使われている学生歌の中で昔ラジオの講座か何かのテーマ曲として使われた最も有名だと思われる「新入生の歌」(ファゴットとオーボエがスタッカートで演奏するメロディー)を管楽器がフォルテで演奏して、その直後に短調に転調するあたりです(第255小節前後)。
 ここでテンポが急に一段階上がります。
 もともとのテンポが速かったので、そこでもう一段階速くなると、ちょっと不自然なくらいで、後ろから追い立てられるような雰囲気がします。
 一歩間違えるとテンポを上滑りしそうで、ちょっと怖いのですが、その焦りと緊迫感が、演奏をよりいっそう盛り上げているのです。
 この部分でのテンポアップは、他の指揮者の演奏ではあまり聞いたことが無く、この演奏の大きな特徴として印象に残りました。(2006/8/26)


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