指揮 | ウィレム・メンゲルベルク |
演奏 | アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 |
録音 | 1930年5月30日 |
発売及び CD番号 | HISTORY(205254-303) Pearl(GEMM CDS 9018) EMI(CDH 7 69956 2) 東芝EMI(TOCE-8191〜99) |
そもそもこの曲は『大学祝典』序曲というタイトルがついているぐらいですから、大学生らしい溌剌とした若者らしさと、カラッと明るい祝典性を期待したいところですが、メンゲルベルクはそんな期待をものの見事に打ち砕いてくれます。 いきなり冒頭からテンポが遅めな上に、アクセントもまるで念を押すかのように重くしているため、若者どころか杖をついた老人のような雰囲気があります。 曲が進むにつれて次第に音楽が前へ前へと進むようになり、少しは軽快さも出てくるのですが、そもそもメロディーの歌わせ方からして溌剌さからは300mぐらい遠くかけ離れています。 とにかくメロディーはひたすら粘っこくたっぷりと歌わせています。 その様子はまるで蜂蜜か水戸納豆のようで、スッキリという言葉とは無縁の世界です。 大学祝典序曲には四つの学生歌が元になっていますが、まがりなりにも少しは軽快に歌わせているのはファゴットがスタッカートでタタタタターターと演奏する第3曲の「新入生の歌」だけではないでしょうか。 まあ、こればっかりはスタッカートなのでテンポ以外では粘りようが無いという事情もあるのでしょう。 さらにその傾向に拍車をかけているのがテンポ変化です。 この曲は直線的にテンポ良くトントントンと音楽が進んでいくというイメージが強いのですが、この演奏ではそんなイメージを壊すかのようにテンポが曲線的に揺れ動きます。 これがたっぷりとした歌わせ方と結びつくことで、他の演奏からは考えられないくらい極限まで歌いこまれたメロディーになっています。 ようするにこの演奏は、若々しさや祝典性よりも、この曲のドラマチックな部分を強調した演奏なのです。 そのため、曲の盛り上がりに合わせてテンポを大きく動かし、これ以上は無いというくらいメロディーを歌わせているのです。 一般的な方向とは異なりますが、ある意味行き着くところまで行き着いてしまった演奏といえるでしょう。(2001/8/31) |