J.A.カーペンター 組曲「乳母車の冒険」

指揮ハワード・ハンソン
演奏イーストマン=ロチェスター管弦楽団
録音1956年10月28日
カップリングムーア P.T.バーナムへのページェント 他
発売マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
CD番号PHCP-10331(434 319-2)


このCDを聴いた感想です。


 この曲を初めて聴いた時、叙情的な雰囲気と明快さを兼ね備えた曲という印象を強く受けました。

「乳母車の冒険」というタイトルですが、要は、赤ん坊が乳母車に乗せられて、散歩に出かけ、近所をぐるっと一回りして家に帰ってくるだけという、ストーリーとしては他愛無い内容で、6曲に分かれていますが、第1曲で出発し(En Voiture『ご乗車ください』)、第2曲でお巡りさんと道端で出会い(The Policeman『警察官』)、第3曲で通りで音楽を演奏している黒人の男女を見かけ(The Hurdy-Gurdy『ハーディ・ガーディ』)、第4曲で湖のそばでゆっくりし(The Lake『湖』)、第5曲で犬たちが何匹も辺りを駈け抜けて行くのに出会い(Dogs『犬たち』)、最後の第6曲で赤ん坊は今日の散歩を思い出しながら眠ってしまう(Dreams『夢』)という、ごくごく普通の光景が描かれています。(※途中の括弧の中は原題と邦訳です)
 こういう当たり前の光景ですが、カーペンターは、写生するように直接その光景を音で表すのではなく、和音やメロディーで雰囲気を作り上げ、例えば第1曲の出発する場面なら、出発する時のワクワクした気分を表現する事で、聴いた人それぞれに、その人が最も相応しいと思う『乳母車に乗って出発するシーン』のイメージを頭に浮かばせるのです。
 他の曲も同様で、楽しげな雰囲気とか、華やかな雰囲気とか、ゆったりした雰囲気といった、その光景に出会ったときの気持ちが感じられる事で、逆にその光景がくっきりとイメージできるのです。
 それに加えて、メロディーも馴染みやすいものばかりです。
 全体的にも『これこそアメリカだなぁ』と思わせるような明るさに満ち溢れていて、不安や暗さを全く感じさせません。
 こういう影のない音楽は、よく底が浅い表面的な音楽になってしまいがちなのですが、この曲には叙情的な柔らかさがあり、単なる明るいだけの曲になる事を防ぎ、より心に印象に残る曲にしているのです。

 ちなみに、この『乳母車の冒険』という曲は、カーペンターの出世作だそうですが、人気が出たというのも納得できるような気がします。(2002/5/17)


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