I.ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」

指揮アンタル・ドラティ
演奏ミネアポリス交響楽団
録音1959年11月15日
カップリングストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」 他
発売Mercury
CD番号434 331-2


このCDを聴いた感想です。


 まるでパイの投げ合いのように、それぞれの楽器が思いっきり個性を投げてぶつけ合っています。
 メロディーから伴奏に至るまで、常に自分が主役だとばかりに、他の楽器を押しのけて、どんどん前に出てきます。
 あちこちから、「こんな動きがあったのか」と驚くような、他の演奏ではまず裏に隠れていたり縁の下の力持ちをやっているような動きが、まるでメインのメロディーのように表に出てきたりと、いろいろ発見があり、興味がつきません。
 また、個々の楽器が前面に出ていますが、あまり華やかという印象は受けません。
 楽器の動きこそ個性が強いものの、音色という点では、華やかというよりも、むしろ見境無く突き刺さる棘のような尖った荒々しい音色で、どちらかというと猛獣のような凶暴な雰囲気です。
 まあ、バーバリズムという面では、申し分ないでしょう。
 特に、フォルテの時のトランペットは強烈です。
 ただでさえ全体を圧倒するぐらいのバランスで登場するのに、その音色がまた脳天に突き刺さるような鋭いもので、二日酔いの人に聞かせたら1秒で暴れだすこと間違いなしという危険なシロモノです。
 ただ、野蛮だからといって、荒っぽい雑な演奏というわけでもありません。
 たしかに、叩きつけるようなアタックや、周りを押しのけてまで前に出ようとする異常なまでの積極性ばかりが目立つので、一見、ハッタリでごまかしているようにも聞こえるのですが、アンサンブル自体はちゃんと揃っています。
 それに、各奏者の技術はかなり高いと思います。
 細かい動きまで目立っているのでよけいわかるのですが、特にパート内では良く合っています。
 例えば、第1部の終曲の『大地の踊り』の弦楽器なんて、相当難しいはずなのに、細かい音符の一つ一つまでクリスタルのようにクッキリと鮮明に聞こえてきます。
 これは、よほど正確に揃っているということでしょう。
 ところで、この演奏が、個々の楽器が強調されて細かい動きまで前面に出ているのには、録音による影響も大きいのかもしれません。
 この演奏の録音は1959年ですが、こういうステレオ録音初期の録音では、全体としての響きよりも、まるで楽器それぞれの前にマイクを一つずつ置いたかのように、個々の楽器の音ばかりクローズアップされている録音が結構ありました。
 もしかしたら、この録音もそういう風に、パートばかりを強調して録音しているのかもしれません。
 ただ、マーキュリーの録音といえば、そういう録り方ではなく、当時としては思い切ったワンポイント録音で、耳に聞こえる響きに最も近い音というので有名なはずですから、今ひとつ納得できないものがあります。
 もっとも、音の鮮明さという点では、現在とほとんど遜色ないぐらいで、相変わらず奇跡みたいにいい音で聞こえます。(2004/4/17)