I.ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」

指揮イーゴル・マルケヴィッチ
演奏フィルハーモニア管弦楽団
録音1959年1・2月
カップリングストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」
販売EMI
CD番号7243 5 69674 2 7


このCDを聴いた感想です。


 昔読んだある本によりますと、マルケヴィッチは、『春の祭典』の合理的な指揮の振り方を編み出したと言う話ですが、この演奏を聞いていると、非常に納得します。
 ほとんど一小節毎に拍子が変わるような変拍子だらけの曲にもかかわらず、それを全く感じさせません。
 音楽が途中で不整脈みたいに詰ったり急に流れたりする事が無く、本当に自然に音楽が流れていきます。
 まるで、一小節毎に変わる新たな拍子が、音楽的に一番演奏しやすい拍子を選んだら、たまたま楽譜上は毎小節違う拍子になってしまったと思えてくるぐらいです。
 これが、最近の演奏であったら、ブーレーズみたいに同じくらい自然に聞こえてくる演奏もあるのですが、これが録音されたのは、1959年です。
 まだ、春の祭典がバリバリ現代音楽扱いされていた頃で、同時期に録音された他の指揮者の演奏からは、多かれ少なかれ指揮者もプレイヤーも、コロコロと変わる拍子に苦労している様子が伝わって来ます。
 そんな時期に、これだけ自然な演奏をすることができたというのですから驚きです。指揮者だけでなく、プレーヤー一人一人に至るまで変拍子を苦にしている様子が無いというのは、もちろんフィルハーモニア管の個々のプレーヤーのレベルが高いというのもありますが、やはりマルケヴィッチがよほど上手い振り方をしているでしょう。

 この演奏のもう一つの特長は音色の豊かなことです。
 春の祭典という曲は、Es管のクラリネットや、アルトフルートや、D管のトランペット等、特殊楽器をたくさん使うことでもよく知られています。
 マルケヴィッチは、これらの特殊楽器が出て来る部分では、その特徴的な音色を強く前面に出して、同族の楽器(例えば、Es管のクラリネットに対して、B・A管のクラリネット)との差を明確につけています。
 さらに、一般的に使われている楽器も、他の楽器と調和する音色よりも差をつける音色で演奏されています。
 そのため、数ある春の祭典の演奏の中でも、かなりカラフルで派手な部類に入ると思います。
 ただ、こういう風に楽器の個性を優先させると、音に拡がりはあるのは良いのですが、締まりの無い演奏になってしまうことがよくあります。
 この点を、マルケヴィッチはアタックを硬めに入れて音にスピード感を持たせることで、見事にフォローしています。
 もちろん、こういうことができるのも、プレーヤーが変拍子であることを苦にしていないという点が、大きなアドバンテージになっています。(2001/12/21)