I.ストラヴィンスキー 交響的幻想曲「花火」

指揮レオポルド・ストコフスキー
演奏フィラデルフィア管弦楽団
録音1922年11月6日
カップリングストラヴィンスキー バレエ音楽「ペトルーシュカ」 他
発売Pearl(Victor)
CD番号GEMM CD 9031


このCDを聴いた感想です。


 まず録音年代に注目して頂きましょう。
 1922年。まだ電気録音以前の機械録音の頃です。
 ストラヴィンスキーというと三大バレエ音楽に代表されるような大編成の曲が多く(もちろんそれでけではなく、特に後年は小さい編成の曲も多かったようですが)、この「花火」は初めての成功作というまだ初期の頃の作品なのですが、既に結構大きな編成です。
 どれぐらい大きいかというと、さすがに後の三大バレエ音楽ほどではありませんが、それでも管楽器は金管はほぼ3管で、ホルンに至っては6本ですし、パーカッションもティンパニー以外にバス・ドラム(大太鼓)やシンバルなど多数。おまけにチェレスタにハープまで2台加わっているぐらいです。
 これを電気録音が登場する前の、まだ貧弱な機械録音で録音しようとするのですからかなり無理があります。
 機械録音も、ソナタのような楽器の少ない器楽曲辺りだと、意外とまともに聴けるのですが、問題は同時に三つくらいの音しか聞き分けられないところです。ほとんど「一つ、二つ、三っつ、たくさん」の世界で、表面に出ている二つ三つの音以外は、なにか鳴っているというのがわかるぐらいで、動きまで聞き取ることはほぼ不可能といってよいでしょう。
 ベートーヴェン辺りのそれほど大きくない編成でさえかなり怪しく、ましてやストラヴィンスキーともなると、本来なら出ているはずの音の半分も聞こえません。
 演奏するストコフスキーもそれはわかっているようで、伴奏はもう聞こえない部分は諦め、かなり整理して削っているのではないかと思います。ほとんどメロディーのみで、それに少し伴奏が加わる程度です。
 ただ、メロディーの比重が高くなる分、メロディーはだいぶ強化してあるようです。録音が悪くてよく聞き取れませんが、おそらく楽譜には無い楽器を加えて音を太くしてあるのではないでしょうか。切り捨てずに残した伴奏も、これだけは聞こえるようにあちこちを補強していると思います。
 その結果聞こえてくるのは、やたらとくっきりと太いメロディーと一部の伴奏で、普通の録音が花火の様子を細かく描き込んだ写実的な絵とすれば、この演奏は、画用紙にクレヨンで太く簡潔に描いた素朴な絵といった趣があります。華やかだったり精細ではないのですが、細かい部分を切り捨て対象を絞り込むことで、メロディーを中心とした太い流れが浮き彫りになって聞こえます。スッキリしているので力強さも感じます。
 ただ、かなりがんばっているとはいえ機械録音は機械録音。響きなんて無いに等しく、とても人にお奨めできるようなものではありません。
 曲の長さは3分程度と当時の録音盤にはピッタリの時間ですが、さすがにこの編成を録音するには機械録音では少し荷が重すぎたようです。(2005/5/28)


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