大栗裕 管弦楽のための神話 −天の岩屋戸の物語による−

指揮下野竜也
演奏大阪フィルハーモニー交響楽団
録音2000年8月
カップリング大栗裕 ヴァイオリン協奏曲 他
「日本作曲家選輯」より
発売アイヴィー(NAXOS)
CD番号8.555321J


このCDを聴いた感想です。


 80年代に吹奏楽をやっていた人なら、一度はどこかで耳にした事があるという有名曲、通称『神話』です。
 といっても、ここで演奏しているのは吹奏楽団ではなくオーケストラ。
 そう、管弦楽版なのです。
 この曲は、吹奏楽界の方が有名なのも道理、もともと1973年に吹奏楽曲として作曲された曲で、後に、朝比奈隆氏の依頼で1977年に管絃楽曲として作曲者本人が編曲して管弦楽版ができあがったのです。

 曲は、一つの物語に沿って進んでいきます。
 まあ、物語といっても、早い話が有名な「天の岩屋戸」の物語です。
 非常に簡単に概略を解説しますと、
「天照大神が天の岩屋戸に隠れため、世の中が真っ暗になってしまい、困った他の神々は、天の岩屋戸の前で宴会を開き、天鈿女命(アメノウズメ)を踊らせる。その騒ぎを不審に思った天照が覗こうと少し扉を開けたところを、手力男命(タジカラオノミコト)が、岩屋戸から引きずり出し、世の中に光が戻る」という話です。
 音楽も、場面がそのまま思い浮かべられるぐらいイメージにピッタリ合っていて、平易でわかりやすいものです。
 最初の方の世の中が真っ暗になった不安な雰囲気とか、後半、岩屋戸の外で起こった騒ぎを覗こうかどうしようか迷う天照の葛藤等も、まるでありありと目に浮かぶかのようにうまく表現されているのですが、特に印象に残ったのが天鈿女命の踊るシーンです。
「3・3・4」という拍子の中でボンゴがリズムを鋭く刻んでいくという非常に特徴的な伴奏に、スピード感溢れるメロディーが強奏で乗っかって派手な音楽を生み出しています。
 しかも、この天鈿女命、ただ踊っているだけではなく、実は踊りながら脱いでいまして、音楽の方も見ている者の興奮が急上昇するのに合わせるかのように、どんどん狂騒的な雰囲気が強くなっていくのです。
 その様子といったら、天照が思わず覗いてしまうのも納得できるような、妖しい魅力に溢れています。
 そもそも、わたしがこのCDを買ったのも、この部分が聴きたかったためと言っても良いかもしれません(笑)
 それにしても、よく考えてみれば、踊りながら脱いでいくというのは、サロメの「七つのヴェールの踊り」と同じシチュエーションです。
 うーん……そういえば、曲の雰囲気自体もよく似ているような気がします。

 管弦楽版と吹奏楽版との違いですが、わたしもこの曲はスコアを持っているわけではないので、細かい部分まではよくわかりません。
 しかし、聴いた感じでは、管弦楽版の方がより柔らかく分厚いように感じられます。一方、吹奏楽版の方は、硬く細く鋭い雰囲気があります。
 おそらく、弦楽器の入っている入っていないの違いが、その辺りに表れているのでしょうが、もしかしたら、単に指揮者の目指す方向性の違いなのかもしれません。

 個人的に、この曲(管弦楽版)は、もっと取り上げられる機会があっても良いと思いますが、CDになったのもほとんど初めてではないでしょうか。
 そう考えると、このNAXOSの日本人作曲家シリーズは、貴重ですし、ありがたいと思います。
 今後の予定では、橋本國彦の交響曲がリリースされるそうで、わたしは非常に楽しみにしています。(2002/7/5)


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