H.ケイ バレエ音楽「星条旗」

指揮アーサー・フィードラー
演奏ボストン・ポップス・オーケストラ
録音1958年6月24日
カップリングゴットシャルク バレエ「ケークウォーク」より抜粋
発売BMG(LIVING STEREO)
CD番号09026-61501-2


このCDを聴いた感想です。


 このバレエ音楽は、ケイ(Hershy Kay 1919〜1961)の作品ではありますが、ケイ自身が作曲したのはその中の一部で、大部分はマーチ王として知られるスーザの作曲したマーチを組み合わせる事で曲がつくられています。
 そのため、CDによっては、作曲者はスーザで、ケイは編曲者と表記されているものもあるぐらいです。
 実際、ケイは、作曲と同じくらい編曲者としても著名だったようで、他にもゴッドシャルクのバレエ音楽「ケークウォーク」の編曲をした事でも知られています。
 さて、肝心のバレエの内容ですが、実は、これといったストーリーがあるわけではありません。
 一応、大きく分けて5つの『場』によって構成されているのですが、それぞれの場でやっている事は、兵士の軍事パレードや軍事演習を模したもので、場によって、演じているのが男性だったり女性だったりとバリエーションはあるものの、物語性といえるようなものは無いようです。
 ただ、パレードや軍事演習を題材にしているだけあって雰囲気は華やかで、さらに、最後の場では全員が集合して、国旗である星条旗を中心に、『星条旗よ永遠なれ』が盛大に演奏されるという非常に盛り上がる展開であることから、このバレエは、ストーリーよりも、愛国心の高揚といったメッセージ的な意味合いが強いものではないかと思います。
 ちなみに、それぞれの場は軍事的な雰囲気から第○キャンペーン(意味は軍事演習または選挙活動(!))という表題がつけられています。
 音楽の方は、ごく一部にワルツが出てくる事を除けば、あとはひたすらマーチしかでてきません。もちろんスーザのマーチです。
 例えば「ライフル・レジメント」「自由の鐘」「雷神」「ワシントン・ポスト」「美中の美」「エル・カピタン」といった有名なマーチが次々と登場します。
 中でも「星条旗よ永遠なれ」は、最後の第5キャンペーンが丸ごと全部この曲のためだけに割り当てられていて、さすがにこのマーチだけは他よりも一段上の特別なマーチである事を実感しました。
 あ、ちなみに、この曲は「星条旗」というタイトルのバレエ音楽ですが、同名のアメリカ国歌でもある「星条旗」は、どこにも登場しません。あしからず。
 また、ケイはバレエ音楽にまとめ上げるにあたって、曲と曲との繋ぎあわせをする以外に、もともとは吹奏楽による編成の曲を管弦楽で演奏できるようにアレンジもしています。
 さらに、一部の曲については、単に吹奏楽から管弦楽へ編曲するだけでなく、リズムや伴奏に大きくてを加えたものもあり、この辺りをスーザの原曲と比較してみるのも、楽しみの一つです。
 スーザ自身は1932年に亡くなっていますが、そのマーチを使ってケイがこのバレエ音楽を作り上げたのは、1957年。初演も翌年の1月 日に行なわれています。
 この演奏の録音が1958年の6月なのですから、実は初演されてからまだ半年も経っていない時期の録音にあたるわけです。
 しかし、フィードラーは、そうとは思えないぐらい慣れ親しんだ曲のように演奏しています。まあ、メロディー自体は、昔から親しんでいるものばかりなので、当たり前といえば当たり前ですが。
 さらに、フィードラーらしく、多少雑然としていても明るく華やかで、しかも、ここぞというポイントではちゃんとバシッと決めているところも、曲の雰囲気によく合っています。
 こういうエンターテインメント志向の強い曲を演奏では、やはりフィードラーの良さが引き立ちます。

 ところで、スーザに関してですが、これはわたしだけかもしれませんが、わたしにとっては、馴染みが深いようで意外と浅い作曲家です。
 例えば、スーザのマーチといえば、上記に書いた他にも「士官候補生」や「忠誠」等、いくつもタイトルが思い浮かびます。
 また、スーザのマーチのメロディーも、これまたすぐに色々なマーチが思い出せます。
 こういう具合に、タイトルもメロディーも頭に浮かぶのですが、これがなかなか結びつかないのです。
 頭の中でメロディーが浮かび、たしかにスーザのマーチというのはわかるのですが、さて曲名は、となると、どうも思い出せません。
 逆に、「忠誠」とか「ワシントン・ポスト」とかタイトルを思い出しても、今度は、どうしてもメロディーが出てきません。
 よくよく考えてみると、タイトルと曲が両方とも瞬時に出てくるのは、「星条旗よ永遠なれ」と「士官候補生」の二曲だけではないでしょうか。
 これが他の作曲家だと、威風堂々(エルガー)とかラデッキー行進曲(J.シュトラウスI)や旧友(タイケ)や双頭の鷲の旗の下で(J.F.ワーグナー)等、ほとんど曲名とメロディーはセットで覚えています。
 これは、たぶん、スーザの作ったマーチに、有名な曲があまりにも多かったためでしょう。
 どれも、スーザが作ったマーチという括りで頭に入ってしまい、ゴチャゴチャになってしまったのだと思います。
 考えてみれば、曲の種類は違うものの、シュトラウス一家のワルツも、やはり有名なワルツがいくつもあるため、頭の中でゴチャ混ぜになった覚えがあります(汗)(2003/11/15)


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