H.ベルリオーズ 幻想交響曲

指揮ポール・パレー
演奏デトロイト交響楽団
録音1959年11月28日
カップリングベルリオーズ 序曲「海賊」 他
発売MERCURY
CD番号434 328-2


このCDを聴いた感想です。


 明快でキビキビとした演奏です。
 テンポはかなり速く、そのスピードに乗ってどんどん前に進んでいくため、勢いがあるのはもちろんですが、オーケストラも乱れなくピタリと付いてきます。
 録音の影響もあるのでしょうが、個々の楽器の動きが細かく聞き取ることができ、それがまたそれぞれ動きにキレがあるのです。個々の楽器の姿がはっきりと見える分、全体としてまとまった響きにはあまり聞こえないのですが、一つ一つの動きが生き生きとしていて、それが次々に展開していく面白さは、これだけで十分な魅力です。
 さらに、動きはしっかりと機能的ですが、音に金属的な鋭さや機械のような冷たさはありません。
 鋭さは控えめで、ずっと素朴な暖かさを感じます。
 第4楽章の断頭台への行進では、金管が大活躍しますが、この金管の響きも、パレーがフランス系の指揮者だから、てっきりフランス風のカラッと乾燥した軽い響きで、明るく突き抜けるものだと思っていました。ところが、実際に聞いてみるとこれが意外です。予想よりもはるかにしっとりと落ち着いた響きで、独墺系とまでいかないまでも、軽さと抜けよりも重さと厚みをより強く感じます。
 第3楽章の最初と最後に登場するイングリッシュ・ホルンも、これは羊飼いをイメージしているということもあるのでしょうが、華やかな音色ではなく、丸く深みのある音色で、なんだかイングリッシュ・ホルンではなくクラリネットを聴いているような気になってきます。この音色は、深みがある分、素朴というイメージとはまたちょっと違うのですが、じっくりと歌いこまれ、情緒豊かです。
 その一方で、音色とは直接関係無いのですが、驚いたのが第2楽章の冒頭です。
 ワルツの楽章ですが、どの演奏でも冒頭は、あまりワルツらしく小節の1拍目を重くしたりはせず、川の流れのように一定の速度で真っ直ぐに進んでいくものですが、パレーの演奏は一味違います。ではワルツらしく1拍目を強調するかというとそうでもありません。なんと1小節の3つの拍全てを軽くアクセント気味に強調しているのです。リズミックといえばリズミックですが、ワルツのリズムともまた違いますし、いちいち念を押しているようでかなり奇妙に聞こえます。それでいて先に進んで序奏を抜けると他の演奏とかわらなくなるところが、またまた不思議なところです。
 さて、幻想交響曲というと、第5楽章の鐘の音色が重要です。この演奏の鐘の音色は、特別に変わった音色ではなく、鋭さを抑えて少し深みのある十分に満足できる音色でした。ただ、気になったのが音程です。鐘はおそらく音程の調整が難しいのでしょう。他の演奏でもしばしばちょっとどうかという音程があります。この演奏も、ひどいというほどではありませんが、低い方の鐘の音程が少しだけ上ずっています。鐘以外が合っているだけにどうも気になりました。(2007/4/28)


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