H.ベルリオーズ 幻想交響曲

指揮アタウルフォ・アルヘンタ
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1957年11月11〜13日
カップリングリスト 交響詩「前奏曲」
発売ポリグラム(DECCA)
CD番号POCL-9778(452 796-2)


このCDを聴いた感想です。


 原色の絵の具でベッタリと塗ったような派手な演奏です。
 いかにもフランス風の響きで、楽器の音色を溶け合わせるのではなく、それぞれの楽器が「わたしの音はこの音!」とばかりに思いっきり自己主張してそれが全員ドンと一斉に演奏するものですから、ほとんど音が洪水のように溢れギラギラと極彩色に輝いています。
 ただ、極彩色の割には、あまりゴテゴテとしたくどい印象は受けません。
 一つには、アルヘンタがあまりテンポを動かさず、少し速めで一定のテンポを保っているというのもあるのでしょうが、もっと大きいのは、響きの薄さだと思います。
 音色自体、ドイツ系の厚みのある音とは正反対の、上下からパンパンと叩いて横に薄く伸ばしたような厚みが無い平べったい音ですし、全体の響きも、低音が土台としてどっしりと座っているのではなく、低音もメロディーの一部としてひょいひょい動き回っていたりと、重心が上に浮いた薄いものです。
 そのため、響きの風通しがよく、極彩色でも、ちまちまと細かい筆遣いで綿密に塗ったものではなく、大きな筆で一気に描いたような、色の割にはスッキリとした雰囲気があるのです。
 それぞれ楽器の音色では、最も印象に残ったのがヴァイオリンとトランペットです。
 ヴァイオリンは、やはりその薄さです。まあ、弦楽器全てにその傾向があるのですが、特にヴァイオリンには驚かされました。
 そのさらさらとした軽さは、他ではほとんど聴いたことが無いような音で、初めて聴いた瞬間は、まるっきり力を入れずに弾いているのではないかと思ったほどです。
 第1楽章のアレグロに入ってからの速い部分は、その軽さが存分に発揮されているところで、曲の目まぐるしく変わっていく展開にも、波を乗り越えるように、やすやすと流れに乗りどんどん前に進んでいきます。
 この部分は、華やかな管楽器と相まって、響きが万華鏡のように次々と変わって行き、キラキラと輝いた音楽になっています。
 そしてトランペット。
 第1楽章の時からその音色は分かっていたはずなのに、第4楽章で高らかにメロディーとして登場した時には圧倒されました。
 非常に伸びのある音で、脳天に突き刺さり、まだ後ろへと伸びていきます。
 さらに、原色系のベタッとした音色で、バランス的にちょっと大きいというのもありますが、他の楽器が束になってもそれよりさらに一段階上を行く強い存在感があります。
 まるで、電気のスイッチをオン・オフしているみたいに、吹いている時と休んでいる時とでは、完全に別の響きになっています。
 しかも、その音は、強く吹いても決して荒くならず、華やかな明るい響きを常に保っています。
 これほどインパクトのあるトランペットは久し振りに聞きました。

 さて、幻想交響曲というと、やはり第5楽章の鐘が重要です。
 この演奏の鐘は少し割れ気味で、残念ながら今一つわたしの好みではありませんでした。
 ただ、それとは別に、少し気づいた点がありました。
 気のせいかもしれませんが、鐘が出てくるときだけ、わずかに響きが異なるようなのです。
 音が出るタイミングも少々ずれている部分もありましたし、もしかしたら、鐘だけ別録音なのかもしれません。(2004/10/9)


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