H.ベルリオーズ 幻想交響曲

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1946年9月9日
発売DUTTON
CD番号CDK 1208


このCDを聴いた感想です。


 ヴァン・ベイヌムという指揮者は、59歳で急死したため録音はそれほど多く残されていません。
 当時の話によると、ベートーヴェンの交響曲なんかはかなり得意なレパートリーだったらしいのですが、録音として残っているのは第2番だけですし、それ以外には映像として第3番が辛うじて残っているに過ぎません。
 ところがその一方で、短い活動期間にもかかわらず同じ曲でなぜか二回も録音しているものもあったりします。
 この幻想交響曲も二回録音した曲の一つで、今回取り上げた1946年の録音の他に、5年後の1951年の録音もあります。
 この二回の録音は両方とも、オーケストラは一緒ですし、録音会社もDeccaですし、しかもどっちもモノラルという点を考えると、録り直した理由がよくわかりません。よっぽど一回目の録音が気に入らなかったんでしょうかねえ?
 まあ、一回目はSPで、二回目はLPという違いはおそらくあるのでしょうが、それだけのために録り直しするとも思えませんし……

 まあ、それはともかくとして、今回取り上げるのは二つある録音のうち、古い方の1946年に録音した演奏です。
 あえて古い録音を取り上げる理由は、毎度の事ながら、早い話がわたしが古い演奏の方が好きなだけなんです。
 これは、復刻による違いかもしれませんが、古い方が音が瑞々しく、また演奏も生き生きとしているように聞こえます。
 ただし、録音ではさすがに劣る部分もあります。
 ピアノのような弱い音の部分では鮮明に聞こえるのですが、フォルテように強い音になると、どうしても音が割れがちになり、また個々の楽器の音もごちゃごちゃになってしまっています。

 演奏スタイルは、テンポをほとんど動かさないアッサリタイプなのですが、メロディーをよく歌わせて、しっかりと表情をつけています。
 テンポが速めで一定にキープされているため、くどくなったり重すぎたりせず、しかも表情付けがちゃんとなされているので、曲の雰囲気は十分に感じる事ができます。
 第2楽章の舞踏会なんかは、アッサリしすぎて華やかに乏しくはありますが、ナチュラルメイクといった感じの自然さがあり、これはこれで好感が持てます。
 さらに第3楽章だと、もったいぶったところが無いだけに、穏やかな野の雰囲気を感じさせるような清々しさがあります。
 これが第4・5楽章になると、きっちり纏まりすぎて、おどろおどろしさという点では少し物足りないのですが、その代わりにメロディーの掛け合いなどが手に取るようにわかり、曲の構造を楽しめたりもします。
 さらに、おどろおどろしさはありませんが、迫力は存分にあり、最後にanimandoからどんどんテンポを速めていくところは大スペクタクルのようで、手に汗握るような興奮があります。

 それにしても、オーケストラの上手さには驚かされます。
 1946年の9月というと、ヨーロッパで戦争が終わってからまだ一年半ぐらいの時期です。  戦争によってオーケストラも少なからず打撃を受けているでしょうし、ヴァン・ベイヌムも常任指揮者の一人だったとはいえ、50年に渡って君臨し続けてきたメンゲルベルクが追放になってしまい、オーケストラに動揺もあったと思います。しかし、この演奏からはそういうマイナスイメージは微塵も感じられません。
 これだけの短い期間でここまで復興できたのは、オーケストラに地力があった事と、やはりヴァン・ベイヌムの並々ならぬ尽力によるものなのでしょう。(2002/6/21)


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