指揮 | ウラディミール・ゴルシュマン |
演奏 | ウィーン国立歌劇場管弦楽団 |
録音 | 1960年5月 |
発売 | VANGUARD |
CD番号 | VECD 7509 |
ゴルシュマンがウィーン国立歌劇場管弦楽団と残した演奏の第2弾です。 こう改めてこのオーケストラを聴きなおしてみますと……うーん、やっぱりどうもあんまり上手くないですね。 ちゃんと弾けていないとか、縦のラインが揃っていないとかそういう訳ではないのです。 微妙なピッチのずれなんでしょうか……音が濁ってきこえるのです。 ゴルシュマンの演奏が優美なため余計目立ってしまうのです。 あっ、でも第2楽章のワルツは、ウィンナーワルツっぽくて舞踏会の雰囲気がよく表れています。 曲全体としては、例えるなら、昔の貴族といった感じです。 優美なんですが、スマートではありません。 重いというほどではないのですが、軽さとかスピード感とかそういった言葉からは縁遠い演奏です。 実は全体を通したテンポは速めなんですが、一つ一つの音をしっかり弾いているせいか、重めに聞こえます。 しかし、VANGUARDの特性なんでしょうか、このシリーズほど楽器間がハッキリ分離している録音もなかなかないと思います。 いや、もっと有体に言えば、例えばマーキュリーの録音のような音のまとまりがあまり無いのです。 それぞれの楽器はとてもクリアに聞こえます。しかしそれぞれが完全に別個に分かれています。 ほとんど、楽器ごとにマイクを用意してるんじゃないかと思ってしまいます。 まあ、まさしくステレオ初期の特徴とも言えるのですが…… しかし、そのおかげ第4楽章、第5楽章は妙な迫力が生まれています。 第4楽章は、各楽器が生の姿を見せるため猟奇的な雰囲気が生まれ、はからずも首切りの様子がリアルに見えてきます。 さらに第5楽章にいたっては、楽器がバラバラに聞こえるところが、正常でない非現実性を連想させ、参加者が背中合わせになってダンスを踊るような、全てが正反対なサバトをまさに思い起こさせてくれます。その上、濁った鐘の音がそれに拍車をかけています。 ここまでの話ですと、かなり病的な演奏のように思われるかもしれませんが、実態は、初めのほうに書いた通り優美でいたって健康的な演奏です。 その健康的な演奏が、ちょっと普通の感覚からずれることで、かえって幻想交響曲の雰囲気をリアルに再現してしまったのです。(2000/8/18) |